2003 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアDNAの進化における種分化と異種間浸透の相互作用
Project/Area Number |
15570082
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
田村 浩一郎 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (00254144)
|
Keywords | ミトコンドリアDNA / 異種間浸透 / 生殖的隔離 / 地理的隔離 / 分子進化 / 分子系統 / ショウジョウバエ / 種分化 |
Research Abstract |
本研究は、様々な生殖的隔離・地理的隔離条件にあるテングショウジョウバエ亜群の種・亜種間について、ミトコンドリアDNAと複数の核遺伝子の系統関係を解析し、どの程度の生殖的隔離・地理的隔離条件でミトコンドリアDNAの異種間浸透が起こるのかをあきらかにすることを目的とする。異種間浸透は一般的に同所的に分布する種間で起こるため、地域集団によって異なる他種と同所的に分布するなど、多様な分布パターンを有する種(Drosophila kohkoa、D. plaua)に特に注目し、集団内多型も考慮した上で、ミトコンドリアDNAと核遺伝子の分子系統学的解析を行い、進化過程におけるmtDNAの異種間浸透を検証する。 平成15年度は、テングショウジョウバエ亜群に属する11種・亜種の計151系統に関して、系統毎にショウジョウバエ1個体から全DNAを抽出し、PCR法によりミトコンドリアDNAのチトクローム酸化酵素I(COI)遺伝子領域を増幅し、オートシーケンサーを用いて直接DNA塩基配列を決定した。そして、得られたDNA塩基配列データに関して分子系統学的解析を行った。その結果、mtDNA分子系統樹においては、ある程度の生殖的隔離が発達しているにもかかわらず同所的に分布する別種の配列がクラスターを形成する場合がいくつも見つかった。特に、D. pulauaの配列は、分布域によって大きく異なる二種類のタイプに分かれたが、それぞれが同所的に生息するD. kohkoa、D. s. sulfurigasterの配列とクラスターを形成した。すなわち、D. pulauaのmtDNA塩基配列は分布域の異なる同種よりも、同所的に生息する異種のものとの類似性が高い傾向が明らかとなった。このことは、D. pulauaとその近縁種の進化過程において、実際にmtDNAの異種間浸透が起こったことを強く示唆する。
|
Research Products
(1 results)