2005 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアDNAの進化における種分化と異種間浸透の相互作用
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15570082
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
田村 浩一郎 首都大学東京, 都市教養学部・理工学系, 助教授 (00254144)
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Keywords | ミトコンドリアDNA / 異種間浸透 / 生殖的隔離 / 地理的隔離 / 分子進化 / 分子系統 / ショウジョウバエ / 種分化 |
Research Abstract |
高等動物のミトコンドリアDNA(mtDNA)は、一般的に核DNAに比べて塩基置換速度が速く、近縁な種の間でも配列間に差異を検出することができる。しかし、mtDNAから推定される系統関係は種分化のパターンのみならず、祖先集団における多型のパターンや種分化過程の集団の地理的分布条件にも強く影響されることが予想される。例えば、分布を共にする種間では、一方の種のmtDNAが他方の種に乗り移る「異種間浸透」と呼ばれる現象が数多く報告されている。そこで、本研究では、テングショウジョウバエ亜群に属する種・亜種を用い、mtDNAの「異種間浸透」が種分化過程の種間でどの程度起こりうるのかを検証することを目的とした。具体的には、様々な生殖的隔離・地理的隔離条件にあるテングショウジョウバエ亜群の種・亜種間について、mtDNAと複数の核遺伝子の系統関係を解析し、どのような生殖的隔離・地理的隔離条件でmtDNAの異種間浸透が起こるのかをあきらかにすることを試みた。今年度は、分布域の場所によって異なる他種と同所的な分布パターンを有するDrosophila plauaに注目し、mtDNAと核遺伝子の塩基配列を比較検討した。その結果、核のwhite、Xdh遺伝子の系統関係は、概ね種毎に単系統的にまとまり、形態、染色体逆位多型、生殖的隔離の程度などから推定される類縁関係とよく一致した。一方、mtDNAの系統関係は種の類縁関係と一致せず、全体として分布域が重なるもの同士が近縁である傾向が見られた。特にD.plauaの配列はD.kohkoaと同所的な場所のものはD.kohkoaと、D.s.sulfurigasterと同所的な場所のものはD.s.sulfurigasterの配列と類似しており、異種間浸透の明らかな痕跡を示した。このように、テングショウジョウバエ亜群の進化過程では、mtDNAの異種間浸透が頻繁に起こったことが明らかとなった。
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