Research Abstract |
腫瘍壊死因子(TNF)α変換酵素(TACE)はphorbol myristate acetate(PMA)や増殖因子等によって活性化され,in vivoでTNFαのみならず,腫瘍化増殖因子(TGF)α, ErbB4, TNFα4受容体,Notch,L-セレクチン,β-アミロイド前駆体蛋白質やプリオン等(現在のところ合計20種以上)の極めて多彩な基質を切断・遊離するセクレターゼであることが明らかになっている.本研究計画は,未だ殆どブラックボックスであるTACEの活性制御機構を明らかにすることを目的とする.我々は最近,ジーンターゲティングにより,ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)のδアイソザイムがTACE活性を厳格に制御し,且つ,その基質の選択性も規定していることを初めて明らかにした.そこで,TACEの活性制御には,刺激によるDGKδの動態の変化や,DGKδとその近縁のアイソザイム(DGKη)の多様性が寄与する可能性が考えられたので,これらの点について解析した.DGKδがSAM(sterile α motif)ドメインを介してホモオリゴマー(少なくとも4量体)を形成し,刺激によりオリゴマー/モノマー間の変換が起こることを示した.次に,DGKδは選択的スプライシングによって生ずる性質の異なるアイソフォーム(DGKδ2:Pro-rich配列を含むN末アミノ酸44個がδ1と異なる)が存在することが明らかになった.更に,DGKδ1のプレクストリンホモロジードメイン中のSer-22とSer-26が,PMA依存性のリン酸化部位として同定され,このリン酸化が表面膜への移行を抑制的に制御することが明らかになった.次に,同じII型に属しDGKδと極めて高い相同性を持つDGKηにも選択的スプライシングよる性質が異なるアイソフォーム(DGKη2:C末端にSAMドメインを持つ)が存在することを見出し,DGKδ1,δ2,η2はSAMドメインを介して順列組合わせ的に多様なヘテロオリゴマー(少なくとも4量体)を形成することが明らかになった.DGKηは浸透圧ショック(0.5Mソルビトール)により初期エンドソームへ移行し,η1とη2ではソルビトール除去後のエンドソームへの滞在時間が異なることを明らかにした.
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