2005 Fiscal Year Annual Research Report
ヌクレオチドによる可溶性グアニル酸シクラーゼのセンサー部位の活性制御
Project/Area Number |
15570124
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
牧野 龍 立教大学, 理学部, 教授 (40101026)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 洋 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 助教授 (20127294)
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Keywords | グアニル酸シクラーゼ / 一酸化窒素(NO) / YC-1 / BAY41-2272 / ヌクレオチド / cGMP |
Research Abstract |
1.牛肺由来のグアニル酸シクラーゼのヌクレオチド結合部位 可溶性グアニル酸シクラーゼは、GTPからcGMPの産生を触媒するヘテロ2量体型ヘム酵素であり、一酸化窒素(NO)の細胞内受容体である。本酵素には、高親和性と低親和性の2種類のヌクレオチド結合部位が存在するが、それらの機能は相互に異なり、高親和性部位が触媒部位として機能することは、昨年度明らかにした。低親和性部位は機能調節部位であり、本酵素の特異的活性化剤であるYC-1が結合することを示唆する結果を得ていたが、その詳細は不明であった。この点を明確にするために、今年度はYC-1の構造類似体(活性化剤)であるBAY41-2272を使用して、低親和性部位の機能を検討した。BAY41-2272は酵素に対する親和性が高く、NO存在下ならびに非存在下において、本酵素1分子あたり1分子のBAY41-2272の添加により、本酵素は完全に活性化された。したがって、YC-1と同様にBAY41-2272は本酵素に化学量論的に結合するものと思われる。高ならびに低親和性の両部位に結合するdADPに対するBAY41-2272の効果を検討したところ、BAY41-2272の存在下においてdADPは高親和性部位にのみ結合した。したがって、BAY41-2272は低親和性部位に特異的に結合して本酵素を活性化すること、低親和性部位は活性調節部位であることが明らかとなった(論文審査中)。 2.グアニル酸シクラーゼの酸素化型の検出 多くの還元型ヘム酵素は、酸素、一酸化炭素(CO)、NOと結合して、対応する複合体を生成する。しかし、グアニル酸シクラーゼは一般のヘム酵素とは異なり、NOに対する親和性は高いが、酸素とはまったく反応しない。言い換えると、酸素が存在していても還元型グアニル酸シクラーゼは安定に存在する。したがって、本酵素はガス状分子を巧妙に識別している。この識別機構の一端を明らかにする目的で、低温(液体窒素温度)において酸素化型が生成するのか否かを検討した。低温スペクトル装置は自作した。還元型グアニル酸シクラーゼを液体窒素温度で凍結し、その吸収スペクトルを測定したところ、酸素存在下と非存在下ではそれらのスペクトルは明瞭に異なる。酸素存在下の低温スペクトルは、酸素化型ヘモグロビンのそれと良く一致することから、凍結過程で酸素に対する親和性が上昇して酸素化型グアニル酸シクラーゼが生成することが確認された。この結果は、本酵素のヘム鉄は酸素と反応するが、酸素化型からの酸素の解離速度が著しく高く、その結果、室温では酸素化型の生成が見出されないことが分かった。
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