2004 Fiscal Year Annual Research Report
緑色イオウ細菌型光化学反応中心にキノンは存在するのか?
Project/Area Number |
15570135
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大岡 宏造 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (30201966)
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Keywords | 緑色イオウ細菌 / 光化学反応中心 / チトクロムc_z / bc複合体 / P840 / チトクロムc-554 / チオ硫酸酸化経路 / イオウ代謝 |
Research Abstract |
緑色イオウ細菌の光化学反応中心には膜結合型チトクロムc_z(PscC)が存在し、反応中心P840への電子供与体として機能している。我々はこのチトクロムc_zが構造的に大きく揺らぎながら、キノール酸化還元酵素(bc複合体)とP840との電子伝達をチトクロムc-554(低分子量の可溶性電子伝達タンパク質)を介さずに行っていることを示した(1998年)。しかしながら我々の観測した反応は、膜標品中にわずかに混在しているチトクロムc-554が原因であるとの反論があり、最終的な決着には至っていない。そこでチトクロムc-554の欠損株を作成することにより、反応中心とbc複合体との共役反応系の追試および証明を行うことにした。得られた変異株(チトクロムc-554の欠損株)から膜標品を調製し、閃光照射後の酸化型チトクロムc_zのキネティックスを様々な条件下で測定した。Q_oサイトの阻害剤であるスティグマテリンを添加するとチトクロムc_zの再還元は阻害され、またQ_iサイトの阻害剤であるアンチマイシンAを添加すると、チトクロムc_zの酸化に伴うチトクロムbの還元(oxidant-induced reduction)が観測された。これらのことはbc複合体とP840との間の電子伝達には可溶性のチトクロムc-554は必要ではなく、チトクロムc_zが直接関わっていることを示している。またチトクロムc-554はbc複合体から電子を受け取ることはできず、光化学反応中心への電子供与にはシトクロムbc複合体とシトクロムc-554からの2つの独立した経路が存在することを明確にした。チトクロムc-554はイオウ代謝におけるチオ硫酸酸化経路に関与している。地球上のイオウ循環においてバクテリアのイオウ代謝は非常に重要であるにも関わらず、その代謝経路はいまだに不明な点が多く残されている。今回作成された変異株は、イオウ代謝経路を解明していく実験系として役立つことが期待される。
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