2005 Fiscal Year Annual Research Report
バイオイメージング法を用いたマウス味蕾内情報処理ネットワークの解析
Project/Area Number |
15570138
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Research Institution | Saitama Institute of Technology |
Principal Investigator |
熊澤 隆 埼玉工業大学, 工学部, 助教授 (90234517)
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Keywords | マウス味蕾細胞 / 細胞内カルシウム / バイオイメージング / ATP応答 / ギャップジャンクション |
Research Abstract |
マウス単一味蕾中の大多数の細胞は味神経とシナプスを形成していない。これらの味蕾細胞がネットワークを形成している可能性について、細胞間伝達物質の一つと考えられるATPを味蕾細胞基底膜に与えたときの応答性とギャップジャンクション阻害剤の効果を調べ検討した。試料には味蕾構造を保存した剥離舌上皮膜を用い、細胞の応答性は細胞内カルシウム濃度変化を指標とした。 1μMATPを味蕾細胞基底膜側に与えると可逆的かつ一過的な細胞内カルシウム濃度の上昇が引き起こされた。この細胞内カルシウム濃度の上昇は、測定したすべての味蕾において味蕾の輪郭を構成する細胞群で顕著であった。さらに、これらの応答を細胞間で比較したところ、ATPを同時に各細胞の基底膜に与えているにも関わらず、応答発現のタイミングが異なっていた。 マウス味蕾細胞間にはギャップジャンクションが存在することが報告されている。ATP刺激が味蕾の輪郭部の連続した細胞群で高い応答性を示すことから、これらの細胞間にギャップジャンクションが存在し、細胞内カルシウム濃度上昇が引き起こされている可能性がある。そこでギャップジャンクション阻害剤であるオクタノールを用いて電気的シナプスの関与について検討した。200μMオクタノールで5分間味蕾の基底膜側を処理すると、処理前後で一部の細胞において著しいATP応答の抑制が引き起こされた。 以上より、味蕾細胞基底膜にはATP応答性細胞群が味蕾の輪郭部に局在していること、ギャップジャンクションがこのATPの受容に関与していることが明らかとなった。これらの細胞群の生理的な役割は不明であるが、味蕾内では化学シナプスや電気シナプスによる味蕾細胞間ネットワークが形成され、味神経へ情報を伝えている可能性が示唆される。
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