2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15570196
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中野 良彦 大阪大学, 人間科学研究科, 助教授 (50217808)
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Keywords | 直立二足歩行 / 下肢関節 / 伸展の制限 / トレッドミル / 関節角度変化 / 初期人類 / 筋力 / 筋電 |
Research Abstract |
ヒトの直立二足歩行の大きな特徴として下肢関節である、股関節の過伸展と膝関節の180度近い伸展があげられる。しかし、進化の過程においてこれらの特徴がどのように獲得されたのかについてはまだよくわかっていない。その解明を目的として、膝関節、股関節のそれぞれについて伸展を制限した歩行の運動を分析した。実験は三次元運動解析装置(エリートシステム,BTS社)とトレッドミル装置(西川製作所)を用いて行った。被験者(成年男子10名)には肩峰点、大転子点、脛骨上端、腓骨外果、踵骨部、第五中足骨頭の各点にマーカーをつけ、通常の歩行、器具の装着により膝関節の伸展を制限した(150°以下)歩行、同じく股関節の伸展を制限した(140°以下)歩行の3タイプにつき、それぞれ、1.歩行板上の任意の歩行、2.トレッドミル上での長時間(10分間)の継続した歩行、3.異なる速度でのトレッドミル上の歩行を行わせた。各試行の三次元の運動変位、関節角度の変化の分析から次のような結果が得られた。1.関節の伸展を制限した歩行では上体の前傾が大きく、継続した歩行を行わせると、膝関節制限歩行では上体が直立してくるのに対し、股関節制限歩行では逆に前傾が大きくなる。2.股関節制限歩行では二重膝作用がみられない。3.関節角度の変化パターンは、膝関節制限歩行はテナガザルと、股関節制限歩行はチンパンジーと似ている。4.股関節制限歩行は速度による変化は少ない。以上の結果から、股関節制限歩行では上体を支えるために大きな筋力を必要とし、長時間の継続した歩行ではその筋疲労による筋力の減少により、前傾が大きくなる。二足歩行には膝関節の伸展より股関節の伸展が重要であり、初期人類が地上生活をはじめる前段階として股関節の伸展が必要とされたと考察される。次年度には、この点をさらに追究するため、筋電図法を用いた研究を行う。
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