2003 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜リン脂質の関わるGTP結合蛋白質機能の大腸菌による分子遺伝学的解明
Project/Area Number |
15580057
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
松崎 博 埼玉大学, 理学部, 助教授 (80008870)
|
Keywords | 大腸菌 / 膜リン脂質 / GTP結合蛋白質 / G蛋白質 / 突然変異株 / Eastern blotting / 膜リン脂質合成欠損変異 / トランスポゾン挿入失活変異 |
Research Abstract |
【目的】 生体膜リン脂質の機能は報告の大腸菌の例に見られるように細胞の中枢機能に重要と考えられるが,合成・分解に関係する遺伝子,因子,リン脂質を個々に対象として研究していたのではすべての機能を明らかにするまでに体系的に解明することはきわめて難しい。そこで大腸菌をモデル生物として生体膜リン脂質の機能をGTP結合蛋白質(以下G蛋白質)について網羅的に検索し,解明することを目的とする。この検索にあたっては,染色体上の無差別突然変異による遺伝子破壊株を用いて,その変異をリン脂質合成欠損突然変異株に導入し,生体膜リン脂質との相互作用に変化を起こしたG蛋白質成分に関係する遺伝子を同定し,その機能を明らかにすることを主な研究とする。実験方法として(1)生体膜リン脂質の存在状態の異なる大腸菌の突然変異株の分離 および(2)ブロッテイングの手法による生体高分子とリン脂質との相互作用の変化した突然変異株の選択の実験によりG蛋白質と膜リン脂質との相互作用に関わる遺伝子の同定を企図した。 【結果と考察】 以上の実験目的でG蛋白質と脂質または膜成分との相互作用の変異株分離の条件を決めるため、1)推定を含むG蛋白質をコードする生育必須遺伝子era,yihA,および蛋白合成の延長因子(EF-TU)をコードするtufAとtufB遺伝子の細胞内での転写・翻訳発現の様相を解析のため、レポーター遺伝子gfpとの転写または翻訳融合プラスミドを構築した。 2)これらのプラスミドを我々の分離した主要リン脂質欠損変異株、pgsA3,null pssA,またはnull cls変異株に導入すると,いずれも対数生育後期以降で野生型への導入に比べ、発現の増加が認められた。 3)さらにG蛋白質と膜リン脂質との結合が起こっているかをどうかを調べるため,GFPのC末端側にG蛋白質を融合した産物をコードする遺伝子yihAを保持するプラスミドを構築し、導入した細胞内での産物の局在性を調べたところ,極近傍に存在が認められた。 4)サーマルブロッターによる解析により,膜リン脂質と結合する膜蛋白質あるいは細胞質蛋白質成分の脂質欠損変異による変動が認められた。これらの結果より,膜リン脂質の多寡または組成によりG蛋白質の発現が変動し,制御されていることを明らかにした。また,目的の突然変異株を得られる条件が整ったと考えられる。 5)現在,研究計画に従ってトランスポゾンMiniTn10::kanの挿入失活による突然変異株の分離を行っている。 【今後の計画と展望】 網羅的な検索により分離された突然変異株の当該失活遺伝子を同定し,これらの遺伝子をプラスミドを用いてクローニングしてリン脂質合成欠損変異株に導入し,GTP結合蛋白質と膜リン脂質との相互作用が,細胞機能にどのように関わるか解析し,モデルを提起する予定である。
|