2004 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜リン脂質の関わるGTP結合蛋白質機能の大腸菌による分子遺伝学的解明
Project/Area Number |
15580057
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Research Institution | Saitama university |
Principal Investigator |
松崎 博 埼玉大学, 科学分析支援センター, 助教授 (80008870)
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Keywords | 大腸菌 / 膜リン脂質 / GTP結合タンパク質 / G蛋白質 / 突然変異株 / 膜リン脂質欠損変異 / 細胞内局在性 |
Research Abstract |
【目的】生体膜リン脂質の機能を大腸菌をモデル生物としてGTP結合蛋白質(以下G蛋白質)について網羅的に検索し,解明することを目的とする。この検索にあたっては,染色体上の無差別突然変異による遺伝子破壊株を用いて,その変異をリン脂質合成欠損突然変異株に導入し,生体膜リン脂質との相互作用に変化を起こしたG蛋白質成分に関係する遺伝子を同定し,その機能を明らかにすることを主な研究とする。実験方法として(1)リン脂質と相互作用するG蛋白質を解析する条件として,推定Gタンパク質発現に対するリン脂質合成欠損変異の影響の解析(2)生体膜リン脂質の存在状態の異なる大腸菌の突然変異株の分離,及び(3)ブロッテイングの手法による生体高分子とリン脂質との相互作用の変化した突然変異株の選択の実験によりG蛋白質と膜リン脂質との相互作用に関わる遺伝子の同定を企図した。【結果と考察】以上の実験目的で1)推定G蛋白質をコードする必須遺伝子era,yihA,および蛋白合成の延長因子EF-TUをコードするtufA,tufB遺伝子の細胞内での転写・翻訳発現の様相を解析のため、レポーター遺伝子gfpとの転写または翻訳融合プラスミドを構築した。2)これらのプラスミドを我々の分離した主要リン脂質欠損変異株に導入すると、酸性リン脂質欠損pgsA3変異では対象G蛋白質遺伝子yihA-gfpの転写発現が対数生育後期でおよそ野生型のおよそ5倍に,またera-GFP翻訳融合では約2倍に増加した。3)酸性リン脂質欠損pgsA3変異のyihA-GFP保持株では対数生育後期に転写極大が認められることがgfpとの融合発現,RT-PCRによるmRNA定量により,明らかになった。4)またpgsA保持プラスミドの導入で酸性リン脂質欠損の回復と同時に,転写活性化が解消した。5)G蛋白質と膜リン脂質との結合を調べるため,GFPのC末端側に推定G蛋白質derを融合した産物をコードする遺伝子を含むプラスミドを構築し、λinchにより,染色体に導入し,細胞内局在性を調べた。両性リン脂質欠損変異へ導入した株で,野生型株と異なり,異常伸長細胞が認められ,隔壁付近に蛍光の局在を示した。6)サーマルブロッターによる解析により,膜リン脂質と結合する膜蛋白質あるいは細胞質蛋白質成分の脂質欠損変異による変動が認められたので,研究計画に従ってトランスポゾンMiniTn10::kanの挿入失活による突然変異株の分離を行っているが,まだ分離・同定されていない。【研究のまとめと展望】大腸菌の必須G蛋白質のyihA遺伝子,蛋白質合成延長因子のG蛋白質遺伝子tufA,tufBは酸性リン脂質合成欠損変異株において転写活性の増大が認められ,この発現が酸性リン脂質合成酵素遺伝子の発現に依存することを明らかにした。GFPとの融合により,推定G蛋白質に関わるderが野生型株では膜付近に,両性リン脂質欠損変異株では隔壁に局在が認められた。以上の結果は,対象のG蛋白質の発現が酸性リン脂質の多寡に依存していること,またG蛋白質と膜リン脂質,生体膜との相互作用の可能性を強く示唆している。
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