2004 Fiscal Year Annual Research Report
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15580084
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Research Institution | Kurashiki Sakuyo University |
Principal Investigator |
深尾 偉晴 くらしき作陽大学, 食文化学部栄養学科, 教授 (70218874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井階 幸一 くらしき作陽大学, 食文化学部・栄養学科, 教授 (00135568)
長澤 治子 くらしき作陽大学, 食文化学部・栄養学科, 教授 (50164413)
木村 万里子 くらしき作陽大学, 食文化学部・フードシステム学科, 講師 (00351932)
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Keywords | 血管内皮細胞 / 線溶系 / t-PA / PAI-1 / 抗血栓性 / 機能性食品 / t-RES / 酢酸 |
Research Abstract |
平成15年度には種々の食材の成分中にヒト培養血管内皮細胞を刺激して細胞からの線溶系因子の放出を変動させ、抗血栓的(線溶活性増強)に機能するものがいくつか明らかになった。黒豆の熱水抽出画分や銀杏やマメタワラのFolch抽出上層、高発酵茶葉の熱水抽出画分、さらに食酢など、いずれも組織性プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)分泌を促進させるか、その阻害因子であるタイプ1プラスミノゲンアクチベータインヒビター(PAI-1)分泌を抑制するか、あるいはその両方の効果を有するものが選抜された。さらに従来から検討してきた海洋深層水にPAI-1分泌を抑制する効果も証明された。 平成16年度にはこれら抗血栓性成分のうち特定の有効成分が明らかなものについてさらに詳細に抗血栓性活性を評価するとともに、赤ワイン中に多く含有されるポリフェノール(トランスレスベラトロール:t-RES)を動脈硬化の発症しやすいノックアウトマウス(アポリポプロテインEおよびLDL受容体の遺伝子欠損)に与えた場合の影響をレーザー照射による内皮傷害モデルによって解析した。その結果、このマウスを高脂肪餌で飼育すると血中総コレステロール量は顕著に上昇し、動脈壁ではプラーク形成が多く認められた。しかしながら、t-RESを含む高脂肪餌で飼育すれば、プラーク形成は有意に抑制されるだけでなく、頚動脈にHe-Neレーザーを照射することで血栓形成を惹起させた場合の血栓形成率も有意に低下した。これらの結果から、t-RESは血管壁への脂質沈着や内皮傷害を軽減する作用のあることが推測された。詳細な作用機序は今後の検討課題であるが、フレンチパラドクスを解釈するうえで貴重な知見であるといえる。つぎに食酢は高血圧予防や血流改善など循環系に有効であることが知られており、その効果は血管作動因子や赤血球変形能における調節機序にあることが一部証明されてきたが、本研究では血管内皮細胞による線溶系調節にも効果のあることを明らかにした。すなわち、食酢の主要成分である酢酸自体が血管内皮細胞を刺激して、t-PA分泌の増加とPAI-1分泌の低下を同時に引き起こすことで顕著な線溶活性の増強が惹起され、血栓溶解に極めて有効な状態とすることが証明できた。さらにt-PA受容体の発現調節にも効果のあることが示唆されたことから、酢酸の抗血栓性機能は多彩であることが予想された。したがって食酢に含まれる酢酸以外の多様な発酵副産物との相加・相乗効果も明らかにすることで、食酢の有効性が血管系からも血液系からも証明されるだけでなく、酢酸などの有機酸の特性を利用して、今後さらに機能性食品としての食酢の開発に結びつく基礎知見であると期待される。
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Research Products
(2 results)