2003 Fiscal Year Annual Research Report
配偶体型自家不和合性における花柱内での花粉識別の分子機構
Project/Area Number |
15580088
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
奥野 智旦 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (60003571)
|
Keywords | リンゴ自家不和合性 / S-RNase固定化クロマトグラフィー / 抗S-RNase抗体カラム / S-RNase相互作用タンパク / S-RNase酵素活性 |
Research Abstract |
リンゴにおける配偶体型自家不和合性の分子機構解明を目的とした。ナス科やバラ科では、花柱においてRNase活性を持つS-RNaseの発現がこの現象に必須であり、花柱と花粉のS遺伝子型の一致により花粉管の伸長が抑制され自他の花粉の識別が行われている。in vitroの生物検定においてS-RNaseは、花粉管伸長を抑制することから自家と他家の花粉管内では進入したS-RNaseの活性が異なって制御されていると考えられる。そこで以下に示す方法を用いてS-RNaseとの相互作用タンパクの同定を目標に研究を行った結果を報告する。 方法;1)リンゴ花柱(品種SD)由来の精製したS-RNase及び抗リンゴS-RNase抗体を用いたHPLCカラムを調製し、自家と他家の発芽花粉管及び花柱の抽出粗タンパク画分からそれぞれS-RNaseとの相互作用タンパクの検索のためのアフィニテイクロマトグラフィーを行った。2)リンゴ品種SDから2種類の精製したS-RNaseのRNase活性に与える、花粉及び花柱抽出物の影響をリンゴ花柱RNA及びトウルーラ酵母由来RNAを基質として調べた。3)in vitroの生物検定において培地に花粉或いは花柱抽出物を添加した場合の花粉管伸長に対する影響の観察した。 結果;1)花粉抽出物からは、親和性を示す30,38,66,90KDのタンパクが花粉のS遺伝子型に関わらず検出され、花柱タンパクについても同様に行い30,36,50KDのタンパクが検出された。これらはカラムからの流出条件がS遺伝子型により異なった。したがって、S遺伝子支配タンパクの可能性も考えられる。これらタンパクのS-RNaseに対する直接的作用及びN末端アミノ酸配列解析については、現在のところ引き続き検討中である。2)天然の基質と考えられるリンゴ花粉RNAに対するS-RNaseの活性は、トウルーラ酵母由来RNAの場合と較べて大きな相違はなく、比活性はより低かった。3)花粉あるいは花柱抽出物を加えても伸長への影響は見られなかったが、花粉及び花柱抽出物の両方を加えると伸長の低下が観察された。しかし、どのような物質によるのかは、まだ不明である。従って、花粉管の伸長停止が、S-RNaseだけの関与かどうかは検討することが必要ある。
|