2004 Fiscal Year Annual Research Report
中部山岳地におけるトウヒ類さび病菌の生活環と発生生態に関する研究
Project/Area Number |
15580122
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
今津 道夫 信州大学, 農学部, 助教授 (30261770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 義隆 茨城大学, 教育学部, 教授 (90134163)
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Keywords | トウヒさび病菌 / ハクサンシャクナゲさび病菌 / ハリモミさび病菌 / ミツバツツジさび病菌 / 生活環 / 中部山岳地 / リボソームDNA / Chrysomyxa属 |
Research Abstract |
中部山岳地のトウヒさび病菌およびハクサンシャクナゲさび病菌を用いてシャクナゲ類およびトウヒ類への接種実験を行った。その結果、八ヶ岳と富士山のトウヒさび病菌さび胞子はハクサンシャクナゲに対して寄生性を示し、冬胞子を形成した。また、八ヶ岳と南アルプスのハクサンシャクナゲさび病菌冬胞子はトウヒに対して寄生性を示し、さび胞子を形成した。リボソームDNAのITS領域ならびにD1/D2領域のシークエンス解析では、トウヒさび病菌さび胞子およびハクサンシャクナゲさび病菌の夏胞子、冬胞子はきわめて高い相同性を示した。一方、IGS領域のRFLP解析ではトウヒさび病菌さび胞子とハクサンシャクナゲさび病菌冬胞子はいずれも高い遺伝的変異を示したのに対して、富士山のハクサンシャクナゲさび病菌夏胞子では遺伝的変異が認められず、バンドパターンもさび胞子や冬胞子でみられたものとは異なっていた。これらのことから、トウヒさび病菌とハクサンシャクナゲさび病菌冬胞子世代の同根関係が明らかになったが、富士山の一部で認められたハクサンシャクナゲさび病菌の夏胞子世代はトウヒへの宿主交代を経ずにハクサンシャクナゲ上での無性生活環を繰り返していることが示唆された。富士山と南アルプスで発生したハリモミさび病菌のさび胞子とミツバツツジさび病菌の冬胞子は、ツツジ・シャクナゲ類やトウヒ類への広範な相互接種実験からその寄生性と生活環が明らかになった。さらにリボソームDNAのITS領域ならびにD1/D2領域の塩基配列データにおいて、これらのさび胞子と冬胞子はきわめて高い相同性を示したが、トウヒ類やツツジ・シャクナゲ類に発生が知られているさび病菌既知種とは明らかに異なっていた。これらのことから、同菌はハリモミに精子・さび胞子世代を生じ、ミツバツツジに冬胞子世代のみを形成するChrysomyxa属菌の未記載種と考えられた。
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