2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15580127
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石村 眞一 九州大学, 大学院・芸術工学研究院, 教授 (20294994)
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Keywords | 広葉樹 / 木材加工 / 木製品 / 挽持 / 植林 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本における広葉樹の工芸的利用の実態を、調査を通して把握し、明治末の調査結果と比較することで、今後の広葉樹の利用に関する具体的指針を導き出すことにある。平成15年度は九州と沖縄県に関する広葉樹利用の実態調査を行った。平成16年度は中国地方、四国地方の広葉樹利用の調査を通して実態を明らかにし、明治末の資料と比較を行った。 広葉樹の利用調査は、最初にアンケートを中国、四国地方に位置するすべての市町村、森林組合に送付した。回収したアンケート結果は18%で、昨年度の20%を下回った。こうした低い回収率の要因に、市町村の統廃合を挙げることもできるが、広葉樹の利用実態がないため、回答しなかったことも事実である。換言すれば、現在の広葉樹の産業利用は極めて少なく、行政サイドでも特に力を入れていないということになる。 アンケートの回収後、平成17年11月より、中国地方の岡山県、鳥取県、島根県、広島県、山口県にてフィールド調査をおこなった。アンケート調査、フィールド調査と明治末に刊行された『木材のノ工芸的利用』に記載されている調査結果を比較した結果、次のことが明らかになった。 1.広葉樹の使用樹種は明治末に比較して半減している。特に海岸線に近い市町村においては、広葉樹の使用が著しく減少している。 2.里山の広葉樹は、昭和三十年代まで薪炭林に利用されていたが、現在は大半が放置林となり、チップ材として一部が利用されているにすぎない。クヌギだけはシイタケのほだ木として各地で少量利用されている。チップ業界も、海外からの安い材料が大量に輸入されることから、近年倒産が相次いでいる。 3.岡山県、広島県でコルクの代用品としていたアベマキも、現在は殆どコルクとしての加工はなされていない。 4.家具業界では殆どが外国産の広葉樹を使用しており、国産材からの転換期は昭和四十年代である。 5.近年の広葉樹見直しで、行政サイドで広葉樹の植林を推奨し始めている。しかしながら、広葉樹の利用を植林と組み合わせて検討している事例は見当たらない。 6.広葉樹を取り扱う流通組織が消滅しており、木材市場で時々ケヤキ、ミズナラ、カシ類が取引されている程度である。 7.各地の博物館、民俗資料館では、昭和三十年代あたりまで使用された広葉樹の製品を展示している。
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