Research Abstract |
スギ,ヒノキ,ヒバ,コノテガシワ雄花から高頻度で分離された菌類群及び細菌群と本子嚢胞子との拮抗反応を調査した。また,病原菌の定着に影響を及ぼす各樹種の花粉の糖含有量を測定した。 菌類群では,Sugi-Pestalotiopsis sp., Hinoki-Pestalotiopsis sp., Hiba-Epicocum sp., Konote-Epicocum sp.を1%Malt水溶液で2週間振とう培養し,培養液を0.2μミリポアフィルターで抽出濾過した。これら4種の抽出濾過液に子嚢胞子を落下させ,それぞれの溶液における子嚢胞子の発芽率を測定した。子嚢胞子落下72時間後の結果では,Sugi-Pesta.抽出液で77%,Hinoki-Pesta.抽出液で84%,Hiba-Epi.抽出液で96%の発芽率を示した。しかし,Konote-Epi.抽出液ではまったく発芽が認められず,Konote-Epi.による子嚢胞子発芽抑制物質の存在が示唆された。 細菌群では,スギ雄花から分離された4種類の細菌,ヒノキ雄花から分離された4種類の細菌,及びコノテガシワ雄花から分離された5種類の細菌を用いた。細菌用培地に増殖させたそれぞれの細菌コロニーの周辺に子嚢胞子を落下させ,72時間後にそれぞれのコロニーに近接した子嚢胞子の発芽率を測定した。その結果,スギ雄花から分離された細菌STa,STb,STc,STdでは,それぞれ40%,80%,48%,40%の発芽率であった。ヒノキ雄花から分離された細菌HMa,HMb,HMc,HMdでは,それぞれ51%,19%,82%,72%であった。また,コノテガシワ雄花から分離された細菌KTa,KTb,KTc,KTd,KTeでは,それぞれ0%,0%,71%,82%,64%であった。以上の結果,HMc,KTa,及びKTbの3種の細菌が,子嚢胞子の発芽抑制に関与している可能性が示唆された。 花粉の糖含有量を調査した結果、スギ,ヒノキ,およびコノテガシワで,それぞれ0.074〜0.075mg/mg,0.152mg/mg,および0.125mg/mgであった。この糖が雄花上で菌類が定着する栄養源となっている可能性がある。
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