2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15580143
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
重松 幹二 岐阜大学, 農学部, 助教授 (00242743)
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Keywords | リグニン / 一電子酸化 / ラジカル / ペルオキシダーゼ / 分子軌道法 / HOMO / 活性中心 |
Research Abstract |
本研究は、リグニン前駆体の酵素によるラジカル化(一電子酸化)を計算化学の手法を用いて解析したものである。 1.リグニン前駆体の一電子酸化 数種のリグニン前駆体およびその類縁物質の分子軌道解析を行い、HOMOエネルギーから被酸化能の程度を比較した。その結果、メトキシル基の数が増すにつれて被酸化能が上昇する結果が得られ、酸化ピーク電位の実測値と定性的に一致した。しかし酵素による反応速度の実測値とは一致せず、酵素反応においては立体障害の影響が大きいことが明らかとなった。また、二量体のHOMOは単量体よりも0.2eVほど安定化し酸化されにくいが、三量体以上ではそれほど変わらなかった。 2.ペルオキシダーゼ活性サイト内での一電子酸化 酵素全体および活性中心部分の分子構造を元に基質との相互作用を解析した結果、メトキシル基と酵素の間に強力な静電引力が存在し、活性中心に基質が到達しにくい状況であることが明らかとなった。このことから、シナピルアルコールに対する低い活性は原子間衝突による立体障害というよりむしろ、電子間引力が制御していると推察した。 3.ペルオキシダーゼ活性部位への侵入とラジカル分子の放出 一電子酸化後基質が活性中心から排出される機構を解析したところ、一電子酸化前は基質が活性中心に接近するほど、酸化後は基質が遠ざかるほどエネルギーの低下が見られた。この結果から、取り込まれた基質が一電子酸化を経て速やかに酵素外に排出される挙動を、活性中心と基質の電子状態が制御していると推察した。
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