2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15580159
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横山 博 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (70261956)
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Keywords | 粘液胞子虫 / 放線胞子虫 / レクチン / 体表粘液 / サクラマス / 魚類寄生虫 |
Research Abstract |
魚類に寄生する粘液胞子虫類の感染・発育制御因子を解析する目的で、サケ科魚の神経系に寄生するMyxobolus arcticusを材料とし、交互宿主であるオヨギミミズを千歳川で採集した。得られたミミズを24穴のマルチウェルプレートに収容して10℃に静置し、翌日、水中に遊離した放線胞子を回収した。放線胞子の極糸弾出・原形質放出を誘導する魚類体表粘液は、感受性魚としてベニザケとサクラマス、非感受性魚としてキンギョを用い、体表面から掻き取ってガーゼ濾過、および遠心分離により精製した。粘液サンプルを希釈してウェルプレート内で放線胞子と反応させた結果、極糸弾出率は、サクラマスで粘液の濃度依存的に上昇し、粘液タンパク量が1.0mg/mlで約60%に達したが、ベニザケでは0.04mg/mlでプラトー(極糸弾出率30%強)となった。キンギョでは0.04から1.0mg/mlにかけて低下し、極糸弾出率は20%強であった。これらの結果に基づき、サクラマスの粘液0.2mgmlと反応させることを陽性対照区に設定し、粘液サンプルと各種市販のレクチンを段階希釈して混合した後に放線胞子と反応させるという実験を行った。その結果、Con A, SBA, DBA, UEA I,PNAで処理した場合、レクチン量が増加するに従って極糸弾出率が減少した。一方、RCA IとWGAで処理すると、陽性対照よりも弾出率が上昇した。この実験結果は、前5種のレクチンにより魚の粘液中に存在する特異結合糖がブロックされ、放線胞子の極糸弾出が阻害されたと解釈できる。また、後2種のレクチンについては、放線胞子に直接作用して極糸弾出が誘導された可能性を示す。さらに、放線胞子から遊離した原形質をウェルプレート内で培養することを予備的に試みたが、増殖・発育は見られなかった。以上の結果より、放線胞子と魚類体表粘液との反応実験系が確立され、放線胞子が認識する粘液中の鎖構造について、ある程度の知見を得た。
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