2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15580159
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横山 博 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (70261956)
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Keywords | 粘液胞子虫 / 放線胞子虫 / レクチン / 体表粘液 / 魚類寄生虫 |
Research Abstract |
魚類寄生粘液胞子虫の感染発育制御因子を調べるため、サケ科魚の神経系に寄生するMyxobolus arcticusと海産魚の腸管に寄生するEnteromyxum sp.を用いて実験を行った。前年度の研究成果から、サクラマスの体表粘液中に含まれる各種糖鎖がM.arcticus放線胞子虫の極管弾出と原形質離脱を誘導することが示された。そこで本年度は、この現象を利用して原形質を単離し、未感染魚に腹腔内注射する感染実験を行った。サクラマスの体表粘液と放線胞子虫を混合して原形質を放出させた後、ナイロンメッシュで濾過して胞子殻を除去し、原形質細胞懸濁液を濃縮した。懸濁液を実験魚に腹腔内注射し、飼育3ヵ月後に感染を調べた結果、低率ではあったが感染に成功した。今回の方法はまだ技術的に改良の余地はあるものの、単離した原形質が感染力を維持していることが証明された。 Enteromyxum属粘液胞子虫の同定および魚からの検出法を開発するため、寄生虫を形態学的・分子生物学的に解析した。胞子の形態的特徴とSSU rRNA遺伝子の塩基配列データから、日本の養殖トラフグなどに寄生して粘液胞子虫性やせ病の原因となっている種類は、Enteromyxum leeiであることが証明された。得られた遺伝子情報を用いて寄生虫を特異的に検出するPCR法も開発した。さらに、栄養体を採集して、in vitroで各種魚類腸管粘液への付着性を検討するとともに、腸管患部を摂餌させる感染実験によりin vivoでも感受性や発育段階の違いを比較評価した。その結果、in vitroでの栄養体付着性は魚種(トラフグ、ヒラメ、クマノミ)間において差は見られず、in vivoでも寄生率や胞子形成の有無に差はなかった。これは、E.leeiの宿主範囲が広いという観察結果とも一致した。 以上の結果より、魚類寄生粘液胞子虫の感染には、その侵入部位である体表または腸管の粘液が深く関与しており、in vivoで魚種間の感受性の違いを評価するバイオアッセイ法が開発された。
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Research Products
(2 results)