2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15580205
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
盛田 清秀 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (80318386)
|
Keywords | 農地制度 / 農地法 / 株式会社の農地取得 / 企業の農業参入 |
Research Abstract |
戦後日本の農地制度は、農地改革で成立した自作農体制を農地法(1952年)により維持するというものであった。寄生地主制復活を阻止するため、厳しい農地権利移動統制が行われ、また農地転用も基本的には認めない仕組みである。しかし、経済成長と農業技術発達とくに機械化の進展は、経営規模拡大を農家に迫った。北海道のような労働市場が相対的に展開していない地域では多くの農家が離農し、農業にとどまった農家は規模拡大を実現したが、都府県においては兼業化と若年労働力の農外流出による担い手の高齢化が進んだ。この結果、都府県を中心に規模拡大が停滞し、高コスト構造が維持されるとともに耕作放棄が急増する事態となり、農地と農業の危機段階を迎えている。このようななかで、規制緩和への流れを背景として農家以外の担い手、とくに株式会社による農地利用と(土地利用型)農業参入を許容する方向へ制度転換が図られている。食品産業側の事情としては、消費者の安全・安心志向を捉え、責任をもって安全安心で高品質の農産物・食品を提供するため、直営もしくはグループ企業による農業参入を目指すものである。農業者の高齢化による耕作放棄が見通される現状では、企業による営農目的の農地利用を否定することは現実的ではないと考えられる。本年は食品製造業と外食業各1社の営農実態について本社でのヒアリング及び現地の実態調査を行い、農業部門の経営・管理の実態、生産計画や販売実態、収益性などについて予備的調査を行った。その結果、施設園芸タイプの経営は大型投資による償却負担ゆえに製品価格は高めであって確実な販路開発が課題であるとはいえ、基本的には工場運営と共通したオペレーションであり成立条件は十分に備えていること、また露地野菜生産の事例では、外食業における労務管理システムの援用等が低コスト化に有効であり、これも十分に存立基盤を有することが推察された。
|