2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15580205
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
盛田 清秀 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (80318386)
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Keywords | 農地制度 / 農地法 / 企業の農業参入 / 株式会社の農地取得 / 農地システム / 農地利用等監視委員会 / 耕作放棄 |
Research Abstract |
農地の耕作放棄が増勢を増しており、高齢化進行や後継者流出に直面する従来の家族経営だけでは十分な農地利用が実現できない事態を迎えている。一方で、農薬の残留、食中毒の原因となる各種有害微生物汚染、BSE等にみられるプリオン病の発生等、食の不安をもたらす事件が近年頻発し、表示等の偽装など人為的要因も相まって食への不安が高まりを示す状況にある。このため、食品産業の一部では、商品戦略の一貫としてあるいは消費者に高品質で安全な食供給を確実にするため、農業参入によって食材の直接生産に乗り出す事例が増えつつある。この動きは構造改革特区による株式会社の農地借入認可等によって後押しされている。 本研究では施設園芸への参入によって生鮮農産物(トマト)供給を拡大している食品製造業の事例と、外食店舗で使用する露地野菜生産に始まり、自社以外への販売も展開するべく米、牛乳生産への取り組みも開始している外食産業の事例を取り上げ、1年目は主として企業による農業参入の経済的存立可能性を検討した。その結果、初歩的知見ではあるが、施設野菜生産は販路確保と特徴ある商品生産(独自品種による製品差別化)により収支は十分に均衡すること、また一般的にはかなりの困難が予想される露地野菜生産においても、販路確保(自社外食店舗を中心とする需要確保)を前提として、外食産業における労務管理システムの援用によって労働コストの圧縮と気象変化による不安定な生産オペレーションへの対応を何とか行っており、収支均衡を実現しつつあることが観察された。経済条件に関しては、機械施設投資の圧縮や、補助金利用の見通し等他の要因とも関連づけた分析が今後なお必要ではあるが、以上の通り基本的知見を得ることができた。2年目は、こうした企業による農地参入にともない、大きな論点となっている株式会社による農地取得問題を対象として、主として制度的条件を検討した。具体的には論点とされている株式会社による農地利用の安定性に関わって(転用等のリスク増大)、規制緩和に伴う市場監視の強化、摘発及び罰則の適用、不法行為の是正・原状回復措置の実施をいかに確保するかが課題であること、それには従来のわが国行政システムの事前規制主義から、事後監視システムへの転換が行われなければならず、それに対応した行政システムの改変、従来の農業委員会制度の見直しあるいは機能強化が課題であることを提示した。最終年次においては、以上の知見を総合化し、現行農地法の農家以外の農地所有・利用禁止規定を緩和する必要があること、具体的には農地利用の規制解除が望ましいこと、それに伴い、農地所有・利用・転用に関していっそう実効性のある監視・調査・摘発体制の整備と原状回復措置の実施が必要となり、「農地利用等監視委員会」(仮称)などの組織・システム整備が課題となる。これらについては、影響力のある民間委員会における提言にも盛り込まれるに至った。
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Research Products
(3 results)