Research Abstract |
本年度は,鶏受精卵を用いた環境ホルモン評価法の応用を目的に,現在環境汚染物質として話題となっているビスフェノールA,ノニルフェノール,フタル酸ベンジルブチル,フタル酸ジブチルおよびDDTを鶏受精卵へ種々の量(0.01,0.1,1,10,100mg)投与し,胚の生存率(孵卵一週間目),孵化率および生殖巣の発育(卵巣あるいは精巣の重量や表現型においてオスをメス化する現象)に及ぼす影響を検討した。その結果,ビスフェノールAとノニルフェノール投与が胚の生存率と孵化率に及ぼす影響については,10mg以上の投与量で生存率および孵化率に顕著な悪影響を生じた。また,フタル酸ベンジルブチル,フタル酸ジブチルおよびDDT投与の場合は,1mg以上の投与量で有意に生存率と孵化率が低下した。さらに,生殖巣の発育については,ビスフェノールA,ノニルフェノールおよびフタル酸ジブチルをいずれの量投与した場合にも,オスおよびメスの生殖巣重量は,対照区(無処理)のそれらと比較して有意な差はなかった。しかし,フタル酸ベンジルブチルを1mg以上の量を投与した区のメス生殖巣重量は,対照区より有意に増加していた。また,DDT投与の場合も0.1mg以上の量でメス生殖巣重量が増加していた(有意差あり)。表現型においてオスをメス化する現象については,ビスフェノールA,ノニルフェノール,フタル酸ベンジルブチルおよびフタル酸ジブチルのいずれの量投与した場合にも観察されなかったが,しかし,DDT投与の場合には,10mg以上の投与量でオスをメス化する現象(卵精巣の形成)が認められた。以上の結果より,高用量の環境ホルモンの鶏受精卵への投与は,胚の発育に影響を及ぼし,環境ホルモン作用の強い物質はオスをメス化する作用を有することが明らかにされた。
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