Research Abstract |
【研究目的】鶏受精卵を用いた環境ホルモン評価法の応用と確立を目的として,受精卵へ環境ホルモンを投与し,胚肝臓におけるビテロジェニンII(Vitellogenin II, VTG II)のmRNA発現レベルを調べることにより,環境ホルモン評価法の確立を試みた。なお,環境ホルモンとしては,エストロジェン様活性を持つ内分泌攪乱化学物質であることが広く知られているビスフェノールA(Bisphenol A, BPA)およびDDTを用いた。また,VTG IIは内因性エストロジェンの作用より肝臓で合成される雌特異蛋白質であり,魚類等の生物に対する内分泌攪乱作用の生物検定法として最近注目されている物質である。 【研究方法】購入した受精卵を37.8℃で孵卵した。孵卵13日目の卵に両物質を溶解した20μlのコーン油を投与した。両物質の投与量を2mgとし,陽性対照群には,0.04mgのエストラジオール17β(Sigma社製)を用い,また対照群には溶媒であるコーン油20μlを投与した。なお,両物質には,GLサイエンス社製の標準品を用い,DDTには,o, p'-DDTを用いた。孵卵15日目に胚の肝臓を摘出し,トータルRNAを抽出後,RT-RCR法にてVTG II mRNA発現レベルを調べた。また,用いた胚の性を明らかにするために,各胚の血液からDNAを抽出し,PCR法にて性判別を行った。 【研究成果】コーン油を投与した対照群の雌雄ともVTG II mRNAの発現は見られなかったが,エストラジオール17βを投与した陽性対照群では,雌雄ともVTG II mRNAが明瞭に発現した。BPA投与群の雌では,発現レベルは低いがVTG II mRNAの発現が認められた。しかし,雄胚での発現は確認されなかった。一方,DDT投与群の雌では,VTG II mRNAが明瞭に発現していたが,発現レベルはエストラジオール17βを投与した陽性対照群の雌に比較して低かった。また,DDT投与群の雄にも発現レベルは低いがVTG II mRNAの発現が認められた。しかし,そのレベルはエストラジオール17βを投与した陽性対照群の雄に比較して低かった。以上の結果より,鶏胚肝臓におけるVTG II mRNAをRT-PCR法で調べることにより,BPAおよびDDTが,エストロジェン様活性を持つことが確認され,その活性の程度は,DDTがBPAよりは高いと考えられた。また,本研究の結果より,内分泌攪乱作用を有する物質の生物検定法として鶏受精卵を用いた環境ホルモン評価法が利用できることが示唆された。
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