2003 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋衛星細胞における脂肪細胞系譜への転換メカニズムと細胞分化の安定性
Project/Area Number |
15580250
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
丸山 公明 明治大学, 農学部, 教授 (80328971)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾野 喜孝 佐賀大学, 農学部, 助教授 (00112318)
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Keywords | 衛星細胞 / 成体幹細胞 / 筋肉細胞 / 脂肪細胞 / ウシ / 多能性 / 細胞分化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、成獣から骨格筋衛星細胞を分離し、その細胞の多能性を証明し、細胞分化のメカニズムを解明することである。過去の実験では、ウシ衛星細胞培養システムの構築、PPARγによる脂肪細胞系譜への転換を行い、この細胞の多能性を証明した。今年度は衛星細胞の系譜の安定性に焦点を絞り、細胞の最終分化と多能性を解析した。本研究では、衛星細胞を筋肉前駆細胞として扱い、細胞融合、多核筋肉細胞の形成、分化マーカーであるミオシンの発現を確認して、最終分化を完了したと判定し、脂肪細胞への分化誘導実験を行った。分化誘導は前回の実験のように、外来遺伝子を導入することではなく、通常の培地にインスリン、デキサメサゾン、3-イソブチル-1-メチルキサンチン加えることによって行った。この結果、筋管、つまり、多核で筋肉タンパク質を発現している細胞にて、脂肪滴を蓄積する細胞が形成された。脂肪細胞分化誘導以前の筋管では筋肉細胞特有のMyoDの発現のみが見られたが、筋管が脂肪を蓄積した時点では、MyoDに加えて、PPARγの発現も確認された。これらの実験結果から、同一の細胞が複数の細胞系譜を維持、提示することができるという結論が得られ、具体的には筋肉と脂肪、双方の特徴を同時に提示する細胞を作成した。更に、この研究成果は、従来の細胞学のドグマ「細胞分化は特定の細胞系譜への拘束であり、系譜転換の能力の放棄である」を否定することであると同時に、細胞分化をゲノムから解析する手掛かりが得られた。遺伝子の不活性化のメカニズムとして、DNAのメチル化とRNAiによる遺伝子のサイレンシングがあるが、現在では、遺伝子のサイレンシングを研究課題として、細胞分化の概念を再度考察し、ゲノムから見た分化メカニズムの研究を進めている。
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Research Products
(1 results)