2004 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノムバイオロジーを基盤とする黄色ブドウ球菌の分子疫学と危害評価
Project/Area Number |
15580272
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
重茂 克彦 岩手大学, 農学部, 助教授 (60224309)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
品川 邦汎 岩手大学, 農学部, 教授 (60133906)
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Keywords | S.aureus / Staphylococcal enterotoxin / recombinant DNA / genome biology / diagnosis / pathogenicity islands / plasmids |
Research Abstract |
近年、複数株の黄色ブドウ球菌ゲノム全塩基配列が決定されたことにより、このゲノム情報を基盤としたブドウ球菌の病原性の解明と疫学への応用が期待されている。本研究は、ゲノム配列情報を活用し、特にブドウ球菌の重要な病原因子であり、ヒトの食中毒の原因毒素であるエンテロトキシン(SE)に焦点を絞り、SE遺伝子群がコードされている可動性遺伝因子(pathogenicity islands, prophageおよびプラスミド)の特徴を明らかにすること、さらに、近年その存在が明らかになってきた新型SEの生物活性についても詳細な解析を行うことを目的として、以下の研究を行った。 A.ブドウ球菌SE遺伝子プロファイルと既知の可動性遺伝因子SE保有パターンとの関連 昨年度に開発したすべてのSE遺伝子を検出可能なmultiplex PCRシステムを用い、食中毒由来黄色ブドウ球菌69株、健康ヒト由来黄色ブドウ球菌97株のSE遺伝子プロファイルを行った。さらに、この遺伝子プロファイルをゲノム配列決定によって明らかになった種々の可動性遺伝因子のSE遺伝子保有パターンと比較したところ、多くの株でSE遺伝子の存在様式は既知の可動性遺伝因子SE多型パターンに従っており、黄色ブドウ球菌のSE遺伝子プロファイルは、どのような可動性遺伝因子をゲノム上に保有しているかで決定されることが推測された。しかしながら、既知のSE保有パターンに従わない株も存在し、新たなアロタイプが存在する可能性が示唆された(FEMS Microbiological Lettersに投稿中)。 B.SE遺伝子をコードするプラスミドの前塩基配列の決定 SED,SEJおよびSEIR遺伝子をコードするプラスミド、p196の全塩基配列を決定し、既知のブドウ球菌のプラスミドと比較したところ、p196はSE遺伝子以外にペニシリン耐性に関与する遺伝子群、カドミウム耐性に関与する遺伝子群を保有することが明らかになった。 C.新型SEの生物活性の解析 以前我々が発見した新型SEであるSERの生物活性を精査し、SERはスーパー抗原活性を有することを明らかにした。また、SERの定量的検出法を確立した。これらの結果より、国際ブドウ球菌スーパー抗原性毒素命名委員会の勧告に従い、本毒素をSEIRと再命名した(Infection and Immunityに発表)。さらにスーパー抗原活性を人為的に欠失させたSECをマウスに免疫することによりTh2免疫反応を誘導することが可能であり、ブドウ球菌間に防御的に働くことを明らかにした(Infection and Immunityに発表)。 以上の成果は、食中毒原性黄色ブドウ球菌がどのような法則性をもってSE遺伝子のセットを保有しているか、また、どのようにして複数のSE遺伝子を獲得してきたか、さらにSEが以下に疾病に関与しているかを明らかにするうえで、極めて重要な知見であると考えられる。
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Research Products
(2 results)