2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15580279
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
萩原 克郎 酪農学園大学, 獣医学部, 助教授 (50295896)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷山 弘行 酪農学園大学, 獣医学部, 教授 (90133800)
石原 智明 酪農学園大学, 獣医学部, 教授 (90082172)
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Keywords | ボルナ病ウイルス / 持続感染 / PML蛋白質 / IFN |
Research Abstract |
ボルナ病ウイルス(BDV)は、非細胞障害性の核内で複製する神経親和性のウイルスである。新生子ラットへの実験感染では、BDVは脳神経細胞に持続感染するが、その機序は不明である。本研究では、BDV感染による細胞の機能変化を明らかにする目的で、細胞増殖分化や遺伝子の転写などに重要な役割を担っている急性前骨髄球性白血病(PML)蛋白質に着目し、ウイルス感染による影響を種々検討した。PML蛋白質は、急性前骨髄球性白血病(PML)の研究から発見された核内に点状に存在する蛋白質でIFNにより産生誘導され、細胞増殖分化や遺伝子の転写などに重要な役割を担っていると同時に、インフルエンザやVSVなどに対し抗ウイルス効果を示すことがこれまで報告されている。そこでIFN及びそれにより誘導されるPML蛋白の抗BDV効果を検討した。 BDV感染による核内のPML-NB (nuclear body)の構造変化及びIFNα/βの抗ウイルス効果をヒトグリオブラストーマ細胞株U373細胞及びVero細胞を用いて調べた。その結果、BDV持続感染細胞のPML-NBは、BDV抗原と供に核内に限局発現しPML-NBの点状構造が不明瞭あるいは消失することが明らかとなった。また、PML発現を誘導するIFNα/β処理により、BDV感染細胞のPML-NBの再構成が確認できたが、BDVの感染とその転写複製は抑制されなかった。さらに、IFN処理による、BDV遺伝子複製および転写への影響にPML分子が直接関与しているか否かを調べるためにVero細胞にPML遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターでPMLを過剰発現させBDV感染抵抗性を検討した結果、PML蛋白の細胞内過剰発現は、BDV遺伝子発現およびウイルス産生に影響しなかった。以上の知見から、BDV感染によりウイルス抗原がPML蛋白と結合することによりPML-NBを消失させ、細胞の増殖分化や遺伝子の転写などに影響を与え、PML-NBの抗ウイルス効果に対し抵抗性を獲得することにより持続感染を成立させている可能性が推察された。今後の展開として、持続感染した個体の脳内でPML-NBがどのように発現しているか観察すると供に、アポトーシスに関連する遺伝子・蛋白の動態を調べる予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Okamoto M, Hagiwara K.et al.: "Experimental vertical transmission of Borna disease virus in the mouse."Arch Virol.. 148. 1557-1568 (2003)
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[Publications] 萩原克郎: "脳に感染するウイルス -日本におけるボルナ病ウイルスについて-"酪農ジャーナル. 7. 33-35 (2003)