2003 Fiscal Year Annual Research Report
犬ジステンパー脳炎による脳の器質的病変のMRIによる解析
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15580287
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松永 悟 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (60282703)
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Keywords | MRI / 犬ジステンパーウイルス / 脳炎 / 犬 |
Research Abstract |
中枢神経系の疾患を疑い精査のために本学附属家畜病院に来院しMRI検査を行った約700症例中37症例で犬ジステンパー脳炎の可能性を考慮し,血清中および脳脊髄液中の抗体価検査,抗原蛋白検査を行った.また,同時にジステンパーウイルスのRNA抽出を行いRT-PCRおよびN-PCRを行った. 37症例中,臨床症状,MR像,脳脊髄液検査所見から脳炎と診断し,かつ犬ジステンパーウイルスの感染による可能性が高いと判断した症例は5症例であった.血清中の抗体価検査,抗原蛋白検査およびPCR検査の結果は,5症例中2症例で抗原蛋白検査が陽性を示し,1症例でPCR検査で疑陽性を示したが,他の症例は陰性であり抗体価検査で優位な抗体価の上昇を示す例はなかった.このことから犬ジステンパー脳炎の診断は血清中の抗体価検査,抗原蛋白検査,PCR検査により診断することは困難であると考えられた.さらに,脳脊髄液中の検査でも5症例いずれにおいても抗体価検査,抗原蛋白検査,PCR検査は陰性であった.以上の結果から,慢性の犬ジステンパー脳炎においてウイルスを検出することは困難と考えられた.その理由としては慢性においては脳炎の原因はウイルスそのものではなく,ウイルス感染によるアレルギー反応によるためと考えられる. MRI検査では,T1強調画像,T2強調画像,FLAIR像,造影後T1強調画像により診断した.これらの撮像法により炎症像を示した症例も認められたが犬ジステンパー脳炎に特異的なものではなかった.また,脳室拡張以外の所見はないものも少なくなかった.通常の撮像法に加え,T1強調型高速グラジエントエコー法によるボリュームデータの撮像も同時に行った.このデータはボリュームレンダリングソフトを用いて,脳室の形状,容積および周囲組織との関連性についての詳細な解析を行うためにデジタルデータとして保存した.このらの解析は平成16年度に行う予定である.
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