2003 Fiscal Year Annual Research Report
動物の中枢神経系疾患における自己免疫応答の関与とその病理発生機構の解明
Project/Area Number |
15580289
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
内田 和幸 宮崎大学, 農学部, 助手 (10223554)
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Keywords | イヌ / 壊死性脳炎 / 肉芽腫性髄膜脳炎 / T細胞 / 自己抗体 / 組織球 / 単球 / ミクログリア |
Research Abstract |
平成15年度は、自己免疫応答がその病理発生に関与すると考えられているイヌ肉芽腫性髄膜脳炎(GME)とイヌ壊死性脳炎に関する病理学的知見が得られたため、それぞれを2報の学術報告として公表した。また関連するイヌの中枢神経系の炎症性変化についてその概要を総説的に取りまとめて臨床獣医師向けの和文雑誌に公表した。 イヌの肉芽腫性髄膜脳炎は、中枢組織特有の何らかの抗原に対する遅延型アレルギーを基礎とする疾患として考えられているが、イヌの脳には組織球の腫瘍性増殖疾患、悪性組織球症が発生することがある。かつてはこの2つの疾患は脳の細網内皮症(reticulosis)と総称されていたこともあり、病理学的には類似点が多い。そこで肉芽腫性髄膜脳炎と脳原発の悪性組織球症についてその浸潤細胞の相違について検討した。その結果、悪性組織球症と肉芽腫性髄膜脳炎において浸潤・増殖する細胞は、免疫組織学的にいずれも組織球の性格を保持しており、差異は認められなかった。一方、肉芽腫性髄膜脳炎ではCD3陽性細胞(T細胞)が悪性組織球症に比べ多く、増殖性核抗原(PCNA)陽性細胞数は悪性組織球症の方が多い傾向が認められたが、統計学的有意差は確認できなかった。このことより、両疾患の鑑別にはCD3、PCNA免疫染色は参考所見としてとどめ、あくまでも通常の組織観察で確認される増殖細胞の異型性や異型核分裂などの所見が現段階では最も鑑別上重要と思われた。 また、イヌの壊死性脳炎は、急性期と慢性期で病態が異なり、急性期においては髄膜直下と大脳皮質・白質境界領域に単核細胞の重度の浸潤が認められ、しばしば肉芽腫性髄膜脳炎との鑑別が問題となる。そこで免疫組織化学法およびレクチン染色により、浸潤細胞の相違を比較したところ壊死性髄膜脳炎では血管周囲に限らず組織実質に浸潤する細胞の多くがRCA-1陽性、MAC387陰性のミクログリアを主体とする細胞であり、肉芽腫性髄膜脳炎における炎症細胞は、RCA-1、MAC387陽性の単球・組織球系細胞が主体と思われ、実質への浸潤は非常に少なかった。いずれの疾患においても多数のCD3陽性のT細胞が病巣内に浸潤していた。また、壊死性脳炎の病変では、C3やIgG等の沈着が壊死巣中や周囲の星状膠細胞に認められた。さらにいずれの疾患においてもCDV-NPに対する抗体に陽性を示す顆粒状物が大型神経細胞内に認められたが、病変との相関は認められなかった。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] M.Suzuki, K.Uchida, et al.: "A comparative pathological study on granulomatous meningoencephalomyelitis and central malignant histiocytosis in dogs"J. Vet. Med. Sci.. 65/11. 1319-1324 (2003)
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[Publications] M.Suzuki, K.Uchida, et al.: "A comparative pathological study on canine necrotizing meningoencephalitis and granulomatous meningoencephalomyelitis"J. Vet. Med. Sci.. 65/11. 1233-1239 (2003)
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[Publications] 内田和幸: "イヌの炎症性神経疾患"獣医畜産新報. 56/10. 808-812 (2003)