2006 Fiscal Year Annual Research Report
動物の中枢神経系疾患における自己免疫応答の関与とその病理発生機構の解明
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15580289
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
内田 和幸 宮崎大学, 農学部, 助手 (10223554)
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Keywords | イヌ / 感覚神経症 / 脳神経症 / 神経節根炎 / 自己免疫 / 自己抗体 / ネコ / ボルナ病 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度までに検索したイヌの感覚神経症の病態に関する取りまとめを行い、第142回日本獣医学会においてその概要を公表した。その詳細については、現在科学雑誌への投稿準備中である。概要としては、イヌの弧発性感覚神経症(神経節根炎)の病理発生には、T細胞により調節される炎症反応がその組織破壊に重要な役割を担っており、この免疫応答は通常用量のプレドニソロン投与では抑制されないことが明らかにされた。本疾患における血清中自己抗体についても検索したが、蛍光抗体法により検出しうる力価の抗体は認められず、イヌの類似疾患である多発性神経根炎(アライグマ猟犬麻原)同様、液性免疫よりも細胞性免疫がより重要な役割を担っていると推察された。イヌの感覚神経症では、特に脊髄神経節周囲の後根が重度に障害される傾向が見られるため、おそらく感見神経路に特異的に分布する抗原に対し自己免疫応答が獲得されるか、何らかの毒性因子により求心性に神経障害が生じ、炎症反応がその組織障害の増幅因子として関与するかのいずれかの可能性が高いと考えられるが、決定には至っていない。 現在、新たな疾患対象として、ウェルシュ・コーギー犬に限定して、散発的に発生する多発性脳神経障害を検索中である。本疾患は、犬種特異性があり、3例について収集された。本疾患については特に顔面神経、三叉神経、舌下神経に限局して、同神経機能が強く障害され、その結果同神経の支配下にある筋組織に著明な萎縮が生じる疾患である。現在生存・加療中の1例の成績では、プレドニソロンに加え、アザチオプリンによる免疫抑制療法により病態の進行が抑制できることより、免疫介在性の脳神経障害あるいは特定領域の炎症性筋疾患が強く疑われる。本疾患については、完全に病理解剖された症例の各種脳神経、脳幹を主体とする中枢神経、および主な脳神経の支配筋組織について検索を進めている。 本研究では、イヌ・ネコの多様な神経疾患を収集する必要があり、収集された中には、感染性疾患、出血性疾患、腫瘍性疾患など本研究の主要目的以外の疾患も多く収集されたが、これらのうち臨床的あるいは病理的見地より新規性のある症例については、症例報告や調査研究としてそれぞれ学術雑誌にその結果を公表した。
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Research Products
(5 results)