2004 Fiscal Year Annual Research Report
細菌のクリソタイルアスベストを介したプラスミド取込み機構とその応用
Project/Area Number |
15580307
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
吉田 直人 宮崎大学, 農学部, 助教授 (50284823)
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Keywords | クリソタイル / アスベスト / プラスミド / 形質転換 / コンピテントセル / 大腸菌 / 滑り摩擦力 |
Research Abstract |
大腸菌を寒天等の弾性体上にて曝露させる方法を考案し、曝露装置を開発して実験に供したところ、弾性体曝露時間が長くなるに従って生細胞は漸次減少した。大腸菌を電子顕微鏡にて観察すると、クリソタイルがミサイルのように細胞膜に突き刺ささっている様子が捕らえられた。これらの実験結果は細菌細胞を弾性体上にて曝露させることのみにおいて、クリソタイルが細菌細胞に突き刺さり、破裂に導くことを意味する。この原理から破裂に至る中間体を利用すれば、遺伝子等有用物質導入の可能性があると考えた。 クリソタイルにプラスミドやトランスポゾン等の遺伝子を付着させた後、大腸菌細胞と混合し、弾性体曝露させたところ大腸菌は遺伝子を取り込んで、抗生物質耐性に形質転換することを見い出した。最適条件ではpUC181μg当たり10^7の頻度で形質転換が確認された。クリソタイルを介した遺伝子導入はコンピテントセルの調製を必要とせず、従来法と比べ操作に煩雑性がない利点を有する新技術である。 クリソタイルは溶液中では5μm以下の凝集体、あるいはさらに細かい単繊維としてコロイド状に浮遊している。弾性体曝露の過程では、曝露時間に伴って水分が寒天中に浸透していくので、クリソタイルの濃度が寒天表面では極度に上昇する環境が生まれる。この過程でクリソタイルは自己凝集し、直径約50μmの栗の殻状になることを証明した。同時に寒天とストリークバーとの界面に生じる滑り摩擦力が作用することによって、クリソタイルは細胞を穿刺すると考えている。この時にプラスミドをクリソタイルの表面に付着させておくと、大腸菌はプラスミドを取込んで形質転換する。クリソタイルが大腸菌の形質転換を仲介するのは、遺伝子を接種する(植え付ける)といったイメージがふさわしい。
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Research Products
(2 results)