2003 Fiscal Year Annual Research Report
理論計算から始まる有機合成-sp^2炭素上でのS_N2反応を用いる合成法の開発
Project/Area Number |
15590014
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
安藤 香織 琉球大学, 教育学部, 助教授 (70211018)
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Keywords | 汎密度関数計算 / sp^2炭素でのS_N2反応 / 溶媒効果 / 活性化エネルギー / ハロアルケンへの分子内求核置換反応 |
Research Abstract |
E-β-chloro-o-hydroxystyreneから得られるアニオンのDMF中での環化反応の遷移状態計算を行った(B3LYP/6-31+G^*,SCRF(Dipole, DMF))ところ、活性化エネルギーは15.8 kcal/molと小さく充分に合成反応として使える反応であるという結論を得た。さらに驚いたことに、遷移状態においては酸素と脱離していくCl-はオレフィン平面状にある完璧なsp^2炭素上でのS_N2型の反応であると言う点であった。比較のためZ-Cl体及びdi-Cl体の計算も行った所、これらでは活性化エネルギーが高くπ結合への付加-脱離の遷移状態を通っていることが分かった。対応するフッ素化合物、臭素化合物についても同様の計算を行い同様の結果を得た。つまり、E体のみがsp^2炭素でのS_N2型の反応を示し、Z体およびジハロ体はπ結合への付加-脱離の経路で反応し高い活性化エネルギーを持っていた。ハロゲンにおける活性化エネルギーの大きさを比較したところ、E-フッ素体では活性化エネルギーが25.8kcal/molと塩素体に比べ大きいこともS_N2型反応の機構と一致している。なお、過去に報告された実験結果としてはE-フッ素体の分子内環化反応がDMF中80度43時間で17%の収率であったとある。今回、我々はE-塩素体の環化反応を行い、室温12時間で82%の収率を得た。一方、対応するZ-塩素体からは110度に加熱しても環化体を与えなかった。このようなタイプの反応が分子間反応でも可能かを調べるために、Z-ClHC=CHCH_3とMeO-の反応の遷移状態計算を行った所、π結合への付加の方が安定の反応がおこる因子となっている。以上、単純なハロゲン化アルキルのsp^2炭素上でのSN2型であった。分子内反応の場合π結合への付加の時大きなひずみがかかり、それがS_N2型反応を理論計算で見出し、初めて実験的にも証明することに成功した。
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