2003 Fiscal Year Annual Research Report
選択的重水素化とラマン差スペクトル強度を利用した薬物結合時の核酸構造変化の検出
Project/Area Number |
15590036
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
外山 聡 東北大学, 大学院・薬学研究科, 助手 (60217560)
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Keywords | 選択的重水素化DNA / 共鳴ラマン分光 / 核酸構造 / 核酸-薬物相互作用 |
Research Abstract |
本研究の目的は、DNAの共鳴ラマンスペクトルの強度をプローブとして、薬物が結合した際に生じるDNAの微小な構造変化を検出し、DNA-薬物相互作用機構を解明することである。しかし、通常のスペクトル測定では、観測系に存在する全塩基のラマンバンドが重畳するため、スペクトルの解析が困難である。これを解決するため、通常のDNAオリゴマーと、着目する1残基だけを重水素置換したオリゴマーを用い、同一条件で共鳴ラマンスペクトルを測定し、両者の差スペクトルを計算する。差スペクトル上には、重水素置換した1残基だけの情報が残る。平成15年度は、このような差ラマンスペクトルの強度とDNAの局所構造変化との相関を確立することを目的として、構造変化の様式が既知の条件において、差ラマンスペクトルの測定、解析を行った。 10塩基目にACミスマッチ塩基対を導入した19merの2本鎖DNAを用い、その融解時における差ラマンスペクトルを解析した。用いたオリゴマーの融解温度は64℃であった。260nmにおける吸収強度の増加率は、25℃から55℃に昇温したときはわずか3%、完全に融解させても31%であった。一方、256nm光を励起光として用いた場合の差ラマンスペクトルでは、25℃から55℃にすると、ミスマッチ個所のアデニンでは約50%もの強度増加が観測された。しかし、ミスマッチ個所から4塩基離れると増加率は約20%となった。1本鎖に融解すると、ミスマッチ個所からの離れ具合に関わり無く、差ラマンバンド強度は2.2〜3倍となった。この結果は、核酸塩基の共鳴ラマンバンド強度は塩基のスタッキング状態に対して非常に鋭敏であり、2本鎖DNA中では1本鎖中に比して、ラマンバンド強度が30〜45%程度に減少すること、ならびにミスマッチ塩基対導入によるようなわずかなスタッキング状態の変化をも検出できることを示している。
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