2004 Fiscal Year Annual Research Report
選択的重水素化とラマン差スペクトル強度を利用した薬物結合時の核酸構造変化の検出
Project/Area Number |
15590036
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
外山 聡 東北大学, 大学院・薬学研究科, 助手 (60217560)
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Keywords | 選択的重水素化DNA / 共鳴ラマン分光 / 核酸構造 / DNA-薬物相互作用 |
Research Abstract |
本研究の目的は、DNAの共鳴ラマンバンドの強度をプローブとして、薬物が結合した際に生じるDNAの微小な構造変化を検出し、DNA-薬物相互作用機構を解明することである。 これまで、核酸塩基の共鳴ラマンバンドの強度は、吸収の淡色効果と連動して変化する、すなわち塩基がスタッキングすると弱くなる、と解釈されてきた。しかし、水素結合も核酸塩基の電子状態を変化させるために、ラマンバンド強度に影響を及ぼすと考えられる。そこで、溶媒効果を利用しアデニン環の水素結合状態を変化させ、共鳴ラマンバンドの強度変化を調べた。その結果、非水素結合状態のラマンバンド強度に比して、全ての水素結合可能サイトが強く水素結合した状態では2〜10倍(バンドにより異なる)もラマンバンド強度が大きくなることが分かった。 ラマンバンドの強度が、塩基のスタッキングと水素結合の両方に依存するならば、ラマンバンドの強度から構造変化を解析することは困難となる。しかし、水中の塩基では、他の塩基、または薬物、タンパク質と水素結合していない水素結合サイトは、溶媒の水と水素結合しうる。水中の2本鎖DNA(Watson-Crick対を形成)と、DNAと強く水素結合することが知られているDNA結合タンパク質との複合体(塩基対形成に加えタンパク質とプリンN7位が強く水素結合)の塩基のラマンスペクトルを測定した。その結果、タンパク質が強く水素結合しても、ラマンバンドの強度変化はわずかであった。塩基対開裂を伴うような、いくつもの水素結合が同時に変化する場合で無い限り、水素結合状態が変化しても、塩基のラマンバンドの強度は大きく変化しない。したがって、水溶液中において薬物等がDNAに結合した場合、DNAの共鳴ラマンバンドの強度変化からは専ら塩基のスタッキング状態の変化、波数変化からは塩基の水素結合状態の変化を検出できると考えられる。
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Research Products
(2 results)