2004 Fiscal Year Annual Research Report
膜蛋白質の膜間移行機構の解明とこれを利用した人工膜ワクチン調製方法の確立
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15590039
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Research Institution | TOYAMA MEDICAL AND PHARMACEUTICAL UNIVERSITY |
Principal Investigator |
上野 雅晴 富山医科薬科大学, 薬学部, 教授 (40080197)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 京子 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (60110623)
鈴木 正夫 構造機能研究所, 研究職
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Keywords | 膜たんぱく質 / 人工膜ワクチン / リポソーム / 膜間移行 / 免疫能 / 中和抗体 / HA / NA |
Research Abstract |
1)膜たんぱく質の膜間移行の機構を解明するために、種々の条件を変化させて移行量を追跡した。膜から放出するたんぱく質と人工膜(リポソーム)に組み込まれたたんぱく質を区別して測定した。放出たんぱく質は温度が高いほど、また人工膜が相分離状態にあるとき移行量が多かった。放出したたんぱく質の一部(あまりインキュベーション時間が長くないときは20%程度)が人工膜に導入された。蛍光ラベル実験から人工膜に導入されたたんぱく質は膜たんぱく質であることが確認された。全体の傾向として、放出たんぱく質と人工膜に組み込まれたたんぱく質がパラレルであることから、膜に一定のダメッジをあたえることによって膜間移行が起こっているようである。この結果はHuestisらの一過的な膜融合モデルとは異なる。インキュベーションの時間が長いほど放出するたんぱく質は増加するが、膜に組み込まれるたんぱく質、特にわれわれの関心のある抗原たんぱく質HAおよびNAについては1時間程度のインキュベーションでほぼ最大に達した。従って、以下の実験では1時間30分のインキュベーションで十分あると判断した。 2)膜たんぱく質の膜間移行を利用して調製した種々人工膜ワクチンについて免疫能を評価した。ELISA法で評価すると、人工膜ワクチンでは、不活化ウイルスの約1/2のIgG抗体価であった。一方中和抗体試験では、不活化ウイルスと同程度の抗体価を与えた。人工膜ワクチンで免疫すると、すべての抗体量に関しては不活化ウイルスに比べて少ないが、感染防御に関係のある中和抗体は不活化ウイルスと同程度誘導されるかとから、人工膜ワクチンの有用性が示唆された。さらにMDP誘導体を組み込んだEggPCリポソームとともに接種することにより、不活化ウイルスの数倍以上の高い中和抗体が誘導されたことより、新しい型のワクチンとして人工膜ワクチンが有望であることが示された。 3)市場動向について:インフルエンザワクチンの製造は、昭和60年1700万本から平成6年30万本と減り続けたが、平成6年を境にまた増加し始め、平成15年には1400万本と昭和62年の水準に回復した。さらに、最近、ノイラミニダーゼ阻害薬の無効の例や副作用が報告され、ワクチンが再び見直されてきている。
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