2005 Fiscal Year Annual Research Report
抗炎症剤による消化管粘膜障害の機構解明:フリーラジカルによる細胞障害
Project/Area Number |
15590065
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Research Institution | Hokkaido Pharmaceutical University School of Pharmacy |
Principal Investigator |
三浦 俊明 北海道薬科大学, 薬学部, 教授 (00094855)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村岡 早苗 北海道薬科大学, 薬学部, 講師 (20347793)
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Keywords | アスピリン / サリチル酸 / ラクトペルオキシダーゼ / クレアチンキナーゼ / 胃粘膜 / フリーラジカル / グルタチオンラジカル / 吸着 |
Research Abstract |
非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)の細胞障害機構のうち、今年度は主としてアスピリン関連薬を用いて組織障害について研究した。胃粘膜障害におけるマーカー分子として、クレアチンキナーゼを用い、ラクトペルオキシダーゼ(LPO)とH_2O_2(LPO-H_2O_2)によって活性化されたサリチル酸による不活性化の機構について調べた。サリチル酸による不活性化の機構はこれまでに明らかにしてきた抗抗炎症剤によるものとは全く異なるユニークなものであった。 サリチル酸はLPO-H_2O_2で酸化的に活性化されてクレアチンキナーゼ(CK)を不活性化した。胃粘膜ホモジネート中のCK活性もLPO-H_2O_2存在下、サリチル酸により同様に不活性化を起こした。嫌気的条件下ではCK不活性化はより顕著におこり、Superoxide dismutase (SOD)やヒドロキシルラジカル消去剤には影響が認められなかった。この結果は、酸素ラジカルはCKの不活性化には関与していないことを示すものであった。サリチル酸ラジカルの発生を示すESRシグナルは検出されなかった。しかしながら、グルタチオンとスピントラップ剤である5,5-dimethyl-1-pyrroline oxideの存在下で、サリチル酸とLPO-H_2O_2を反応させると、弱いながら、グルタチオンラジカルの発生を示すESRシグナルが検出された。アスピリン関連薬中で、サリチル酸とサルサレートはLPO-H_2O_2でCKの不活性化を引き起こすものの、アスピリンやエテンザミドにはそのような作用は観察されなかったので、これらの構造中に存在するフェノール性水酸基が不活性化に重要な役割を果たしているものと考えられる。さらに、LPO-H_2O_2によるサリチル酸酸化の過程で、CK中のSH基の著しい減少と共に、サリチル酸がCKに強く吸着されることを観察した。サリチル酸の吸着はLPO-H_2O_2による活性化によっており、他の抗炎症剤と異なってサリチル酸による粘膜障害には、吸着による粘膜の性質の変化も関連していると考えられる。
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Research Products
(1 results)