2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15590072
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
高橋 典子 星薬科大学, 薬学部, 助教授 (50277696)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 哲也 星薬科大学, 薬学部, 教授 (90111971)
山崎 正博 星薬科大学, 薬学部, 助手 (80328921)
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Keywords | アセトアセチルCoA合成酵素 / ケトン体 / 脳 / コレステロール / HMG-CoA還元酵素 / CoAトランスフェラーゼ / in situ / 海馬 |
Research Abstract |
ケトン体利用酵素であるアセトアセチル-CoA合成酵素(AACS)はアセト酢酸をアセトアセチル-CoAに活性化するリガーゼであり、哺乳動物において様々な組織に発現する。本酵素はステロイド合成に深く関与し、脂質生合成の盛んな臓器に多く分布し、糖尿病や高脂血症と関連すること、性差があること、及び脳(海馬等)に高発現していること等を明らかにした。また、脳内分布をin situ hybridization法を用いて比較検討したところ、本酵素は海馬錐体細胞層や小脳白質細胞層に高発現し、HMG-CoA還元酵素(HMGCR)の発現とは相似していたが、もうひとつのケトン体利用酵素であるCoAトランスフェラーゼ(SCOT)とは大きく異なっていた。そこで、糖代謝異常疾患である糖尿病時の脳組織におけるケトン体代謝の役割を検討するため、I型糖尿病モデルラットにおけるAACS、及び脂質代謝酵素遺伝子のin situ発現分布を調べた。Streptozotocin (STZ)投与群、及びコントロール群の血中ケトン体(総ケトン体量、アセト酢酸量、-ヒドロキシ酪酸量)を測定したところ、正常ラットに比べSTZ投与ラットではこれらの値が有意に増加していたので、これらを糖尿病ラットとして実験に用いた。次に、糖尿病ラットの脳、心臓、肝臓、腎臓からRNAを抽出し、各臓器のAACSの遺伝子発現について比較検討を行った結果、全ての臓器において、正常ラットに比べ大きく減少していた。また、他のケトン体代謝、及び脂質代謝系酵素の遺伝子の脳内発現をin situ hybridization法を用いて比較検討したところ、糖尿病ラットではAACSとHMGCRの遺伝子発現が顕著に減少したのに対し、SCOT遺伝子の発現はあまり減少しなかった。また、脂肪酸合成に関与するアセチル-CoAカルボキシラーゼは通常時でも遺伝子発現が弱いものの、糖尿病時においてはその発現が確認できないほどに減少していた。このように、脂質合成に関わる酵素と連動してAACSの遺伝子発現が糖尿病時に減少することは、本酵素が脂質合成、特にコレステロール合成系に深く関わっている可能性を示唆するものである。脳内でのコレステロール合成・代謝は、ニューロステロイドの基質供給や細胞膜のドメイン機能の制御、アルツハイマー病に代表される記憶障害等に重要な関連があるとされている。従って、AACSは記憶や運動調節を司るこれらの領域においてケトン体からのコレステロール合成を通じて重要な役割を果たしている可能性が示唆された。また、CoAトランスフェラーゼ遺伝子が減少しなかったは、糖尿病時の糖代謝不全の危機的な状態においてケトン体をエネルギー源として利用する事が重要であるためと考えられる。
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Research Products
(2 results)