2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15590089
|
Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
中澤 憲一 国立医薬品食品衛生研究所, 薬理部・第二室, 室長 (00198061)
|
Keywords | P2X受容体 / 原子間力顕微鏡 / ATP / 構造 / 機能 |
Research Abstract |
昨年度に続き,ATP受容体チャネル(P2X受容体)の液中のおける構造を原子間力顕微鏡で観察した.昆虫由来SF9細胞の発現系より精製した受容体タンパク質を,150mM KClおよび10mM MgCl_2を含むトリス緩衝液中に希釈し,マイカ上で観察したところ,ATP存在下でタンパク質が高密度に配列した2次元結晶に似た像が得られた.このような配列ではプローブのz軸方向の動きを低下させるため,高い解像度が得られる.実際,受容体タンパク質の表面をナノメートル・オーダーで解析することができ,その結果,1)タンパク質は径10ナノメートルのユニット構造を取る,2)ユニット構造の中央には直径数ナノメートルの孔が認められる,3)1つのユニットは数個(おそらくは3つ)のサブユニットから成る,という情報が得られた.このような構造を直接的に観察したのはこれが初めてである.ATP非存在下ではこのような高密度な配列は得られず,この受容体タンパク質は非ATP結合時には比較的不均一であると推察された.また,ATP受容体の拮抗薬であるスラミンをATPと共存させた場合には,受容体タンパク質の高密度の配列が得られたが,表面を拡大観察するとユニット構造が不明瞭であった.このことから,1)スラミンは単純にATPを受容体から解離させる薬物ではないこと,2)スラミンガが結合した受容体タンパク質の状態は,ATPが結合した場合と異なること,が示唆された.マイカの代わりにシリコンを用い,表面をアミノシランで修飾して受容体をアミド結合させることも試みた.この方法では受容体タンパク質の高密度の配列は得られたが,シリコン基盤の凹凸のため,高い解像度でタンパク質を観察することはできなかった.以上のことから,リガントとの相互作用をタンパク質レベル(ナノレベル)での解析において,原子力顕微鏡は強力なツールとして利用できることが示された.
|
Research Products
(2 results)