2003 Fiscal Year Annual Research Report
ダイオキシンによる間葉系幹細胞の多分化能のかく乱とそのメカニズム
Project/Area Number |
15590114
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
手塚 雅勝 日本大学, 薬学部, 教授 (00046294)
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Keywords | ダイオキシン / 間葉系幹細胞 / Ahレセプター |
Research Abstract |
ダイオキシンの毒性はその特異的な受容体であるAhレセプターを介して発現する。Ahレセプターはその構造内にbHLH/PASドメインを有する転写因子であり、他の多くの転写因子とファミリーを形成している。そこで本年度はヒト間葉系幹細胞を脂肪細胞、骨芽細胞ならびに軟骨芽細胞に分化誘導し、その分化能に対する2,3,7,8-Tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD)の影響を検討した。 まずTCDD存在下において幹細胞を脂肪細胞へと分化誘導し、その分化の程度をオイルレッドOによる脂肪滴の染色ならびにマーカー遺伝子の発現より検討した。その結果、TCDDに曝露した細胞において脂肪滴蓄積の抑制、さらにマーカー遺伝子であるPPARγ2ならびにaP2の発現量の低下が認められた。すなわちTCDDによる脂肪細胞分化の抑制が示された。その一方で、TCDD存在下において骨芽細胞へと分化誘導した際には、骨芽細胞のマーカー遺伝子であるosteopontinの発現量の増加が観察され、顕微鏡下においても骨芽細胞への分化の促進が観察された。また軟骨芽細胞分化に対してTCDDは影響を与えなかった。以上の結果よりTCDDはヒト間葉系幹細胞の多分化能に対して、脂肪細胞分化を抑制し、その一方で骨芽細胞への分化を促進することが示された。 脂肪細胞分化の抑制因子としてMAPキナーゼが知られているが、この因子は同時に骨芽細胞分化の促進因子であることが知られている。我々は以前、TCDDならびにAhレセプターがMAPキナーゼの活性を高めることを見出した(Shimba et al.,2001)。したがって本研究で見い出されたTCDDによる多分化能のかく乱においてMAPキナーゼが関与することが推察された。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Shimaba, S., Hayashi, M., Ohno, T., Tezuka, M.: "Transcriptional regulation of the AhR gene during adipose differentiation."Biol.Pharm.Bull.. 26・9. 1266-1271 (2004)