2003 Fiscal Year Annual Research Report
腎障害時における肝代謝型薬剤のバイオアベイラビリティ変動機構
Project/Area Number |
15590126
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Research Institution | Toyama Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
橋本 征也 富山医科薬科大学, 大学院・薬学研究科, 教授 (90228429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田口 雅登 富山医科薬科大学, 大学院・薬学研究科, 助手 (20324056)
合葉 哲也 富山医科薬科大学, 大学院・薬学研究科, 助教授 (00231754)
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Keywords | 腎障害 / バイオアベイラビリティ / 肝代謝 / CYP3A / CYP2D / 小腸 / 初回通過効果 |
Research Abstract |
腎機能低下時に肝代謝型薬剤を選択することは、薬物動態特性に基づいた合理的な薬物療法の基本である。しかし、一部の肝代謝型薬剤の体内動態が腎障害患者において顕著に変動するという事実は、この基本に当てはまらない特筆すべき事例として、臨床薬理学や薬物動態学の教科書に取り上げられている。すなわち、β-遮断薬プロプラノロールを経口投与した場合、腎不全患者において薬物血中濃度が健常者の数倍にも増大することが1970年代に報告された。その後の検討から、腎疾患時の薬物血中濃度の上昇は、経口投与時のバイオアベイラビリティの上昇(肝臓における初回通過効果の低下)に起因することが明らかになっているが、その詳細なメカニズムは不明であった。そこで本研究では、腎機能低下時の肝代謝型薬剤のバイオアベイラビリティ変動機構の解明を図った。 数種類の腎障害モデルラットを用い、小腸のバリア機能の変化と肝初回通過代謝の変動性を評価した。腎障害時にはプロプラノロールの肝代謝活性に有意な変動は認められないものの、小腸の吸収速度の上昇に伴い肝初回通過代謝が飽和性を示し、肝抽出率が低下するためバイオアベイラビリティが上昇することを明らかにした。すなわち、「腎障害時には小腸のバリア機能が低下し、薬物の吸収速度が増加する。肝初回通過代謝に飽和性がある薬剤では、小腸からの吸収速度の上昇に伴い肝初回抽出率が低下し、バイオアベイラビリティが上昇する」ものと考えられる。本研究結果は、全てではなく一部の肝代謝型薬剤の体内動態が腎障害時に顕著に変動するという現象を合理的に説明することが可能であり、薬物個別投与設計法の改良のみならず、薬物動態学の進歩にとっても有用な知見と考えられる。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Okabe, Hiromi: "The increased intestinal absorption rate is responsible for the reduced hepatic first-pass extraction of propranolol in rats with cisplatin-induced renal dysfunction"J.Pharm.Pharmacol.. 55・4. 479-486 (2003)
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[Publications] Aiba, Tetsuya: "Poor correlation between intestinal and hepatic metabolic rates of CYP3A4 substrates in rats"Pharm.Res.. 20・5. 745-748 (2003)
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[Publications] Taguchi, Masato: "Effect of CYP2D6*10 on pharmacokinetic variability of routinely administered metoprolol in middle-aged and elderly Japanese patients"Eur.J.Clin.Pharmacol.. 59・5-6. 385-388 (2003)
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[Publications] Okabe, Hiromi: "The hepatic and intestinal metabolic activities of P450 in rats with surgery- and drug-induced renal dysfunction"Pharm.Res.. 20・10. 1591-1594 (2003)