2003 Fiscal Year Annual Research Report
老人痴呆に対する新規治療法の開発 -鼻腔内投与による神経成長ペプチドの脳内送達-
Project/Area Number |
15590145
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
坂根 稔康 摂南大学, 薬学部, 講師 (50215638)
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Keywords | 鼻腔内投与 / ペプチド / 脳脊髄液 / 脳内送達 |
Research Abstract |
生体内非分解性のモデル高分子として、種々の平均分子量を有するFITC-Dextran (FD)を用いた。ラット大脳皮質前頭葉にマイクロダイアリシスのプローブを装着し、麻酔下、FDを含む投与液を鼻腔内に投与した。プローブからの流出液および血液を経時的に採取し、それぞれに含まれるFDを蛍光分光光度計により測定した。血中濃度の経時変化から血液への吸収率を計算するとともに、投与液中FD濃度に対するプローブ流出液における回収量の比を鼻腔から脳への移行性の指標とした。まず、移行経路の詳細を検討するためにendocytosis阻害剤を併用した場合の移行性を測定した。高分子物質の鼻腔内からの脳への直接的な移行に関しては、endocytosisにより嗅神経細胞内に取り込まれた後、神経細胞内を軸索輸送により輸送される可能性が指摘されている。endocytosis阻害剤の併用により、FDの脳への移行性が若干低下する傾向が認められたが、非併用時と大きな相違は観察されず、高分子物質においても、その脳移行に対する神経細胞内軸索輸送の寄与は小さく、FDも鼻腔から脳脊髄液へ移行した後、脳へ移行することが示唆された。次に、分子量の異なるFDを用いて、分子量と脳への移行性との関係を検討した。その結果、FDの定量感度の範囲内において、分子量約50kDaまでのFDがプローブ流出液に回収された。ペプチドについては、さらに分解による移行性の低下が予想されるため、応用を考えた場合、分子量10kDa程度以下のペプチドを対象とするべきであることが示唆された。吸収促進剤を用いて脳への送達効率の改善を試みたところ、各FDの移行性は増大し、分子量約70kDaのFDもプローブ中に回収された。しかし、脳への移行性に比べて、血液への吸収性の増大が顕著であり、脳へのペプチド・高分子の送達に対して、吸収促進剤の使用が必ずしもプラスとならないことが明らかとなった。
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