2004 Fiscal Year Annual Research Report
血圧・心拍数の調節に時計遺伝子clockはどのように関与するか?
Project/Area Number |
15590210
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
勢井 宏義 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教授 (40206602)
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Keywords | 時計遺伝子 / clock / 血圧 / 心拍数 / 副腎 / 腎臓 |
Research Abstract |
心筋梗塞や狭心症、脳血管発作など、循環器の多くの疾患には朝方に発症率が高いというサーカディアンリズムが存在する。近年、サーカディアンリズムの発生機構にかかわる時計遺伝子群が明らかにされている。本実験では、時計遺伝子のひとつであるclockに注目し、clockが循環調節にどのように関連するかを、clock遺伝子変異マウスを用いて明らかにすることを目的とした。血圧測定にはマウス用のテレメトリシステムをもちいた。まず、clock遺伝子変異マウスとその野生型マウスに、血圧送信器と脳波・筋電図用の電極を植え込んだ。充分な回復を待って、48時間のポリグラフ記録を行った。野生型マウスでは、血圧・心拍数とも、暗期に高く明期に低いというサーカディアンリズムを示した。一方、clock遺伝子変異マウスでは、明期の血圧の低下が有意に小さく、また、暗期の心拍数の上昇が有意に小さかった。すなわち、clock遺伝子に変異によって、血圧・心拍数のサーカディアンリズムの振幅が低下することが分かった。次に、体液量調節機構の異常を予測し、副腎の摘出実験を行った。副腎を摘出した後、野生型とclock遺伝子変異マウスの間で、血圧・心拍数の値やサーカディアンリズムの振幅に差がなくなった。それぞれの位相には影響がなかった。また、血液中のコルチコステロンは、clock遺伝子変異マウスにおいて、大きな位相のずれが存在するものの、分泌量には差がなかった。アルドステロンは、clock遺伝子変異マウスにおいて明期に有意な分泌低下がみられ、リズムも消失していた。血圧・心拍数のサーカディアンリズム振幅の低下は、副腎皮質ホルモンの分泌動態の変化に起因する可能性が示唆された。時計遺伝子clockは、副腎皮質ホルモン分泌に大きく関与しており、clock遺伝子の変異が、体液調節を介して血圧・心拍数の調節にかかわっていることが明らかになった。
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Research Products
(1 results)