2003 Fiscal Year Annual Research Report
筋肉系細胞分化における共通したシグナル伝達系と転写制御機構の解明
Project/Area Number |
15590246
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
林 謙一郎 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (90238105)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 克志 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (70296565)
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Keywords | 平滑筋細胞 / シグナル伝達 / IGF-I / MAPK / Ras / Grb2-Sos / IRS-1 / SHP-2 |
Research Abstract |
我々が確立した分化型血管平滑筋細胞の初代培養系ではIGF-Iは分化型形質維持に必須の外因性因子であり、血管平滑筋細胞の増殖・遊走を起こすことなく、分化型形質(紡錘体型形態、収縮能、及び分化型形質の分子マーカー発現)の維持を可能にした。分化型平滑筋細胞ではIGF-IによりPI3-K/PKBを介したシグナル伝達系のみが活性化され、分化型形質維持はこのシグナル伝達系に依存している。逆に、一旦、脱分化した平滑筋細胞ではIGF-IはPI3-K/PKB経路に加えてERK及びp38MAPK経路を活性化し、これら両MAPK経路の活性化が脱分化平滑筋細胞の遊走・増殖を来たす。骨格筋細胞の分化において、IGF-Iにより活性化されるPI3-K/PKB経路が筋芽細胞から筋管形成への分化誘導を促進する。IGF-IによるERK経路の活性化は筋芽細胞の増殖を促進させるが、筋管形成を抑制する効果を持つ。両筋肉系細胞においてIGF-I/IGF-I受容体を介したシグナル伝達経路は形質依存性に細胞分化と細胞増殖を制御する共通点を示す。本年度は平滑筋細胞での形質依存性IGF-Iシグナル伝達経路の制御機構を分化型と脱分化型平滑筋細胞を用いて解析した。脱分化型平滑筋細胞ではRasを介したシグナル伝達に関連したシグナル分子の発現量が分化型平滑筋細胞に比較して著明に増加すること、脱分化型平滑筋細胞におけるIGF-IによるERKとp38MAPKの活性化にRasが直接関与すること及びGrb2-Sos複合体とチロシンリン酸化を受けたIRS-1との結合がRasの活性化を誘導することを見いだした。分化型平滑筋細胞ではIGF-I刺激でチロシンリン酸化を受けたIRS-1はtyrosine phosphatase, SHP-2と結合し、SHP-2によりIRS-1のGrb2結合部位が脱リン酸化を受け、この結果Grb2-Sos複合体との結合が抑制され、両MAPK経路が遮断される。脱分化平滑筋細胞ではIGF-I刺激によるSHP-2とIRS-1の結合は認められない。以上の結果は、IGF-Iの血管平滑筋細胞に及ぼす両面性の効果は形質依存性に制御されたRasを介したシグナル伝達系のon-ofrに依存しており、この制御のカギとなるシグナル因子がIRS-1/SHP-2であることを示す。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Yoshida K.: "Vascular remodeling induced by naturally occurring unsaturated lysophosphatidic acid in vivo"Circulation. 108. 1746-1752 (2003)
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[Publications] Takahashi M.: "Epiregulin as a major autocrine/paracrine factor released from the ERK- and p38MAPK-activated vascular smooth muscle cells"Circulation. 108. 2524-2529 (2003)