2003 Fiscal Year Annual Research Report
傷害臓器特異的c-Met、HGF受容体活性化の分子機構
Project/Area Number |
15590272
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
町出 充 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (90346198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 敏一 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (00049397)
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Keywords | HGF / c-Met / protein kinase C / チロシンキナーゼ / チロシンフォスファターゼ / ストレス / 発癌 / 組織傷害 |
Research Abstract |
HGF(肝細胞増殖因子)が生体の恒常性を維持しながら傷害臓器特異的に修復作用を発揮するメカニズムについて、傷害の有無に応じたHGFに対する応答性の変換機構に焦点を当て下記研究計画を実施し、以下の成果を得た。 1)初代培養肝細胞を用いてHGFの増殖促進作用に影響を与える細胞環境について細胞密度による影響を検討したところ、高密度で培養した場合においてのみHGFによる増殖促進は抑制され、この時HGFレセプターであるc-Metの活性化が細胞増殖の開始に必要な時間まで持続しないことが明らかになった。またその原因として細胞密度依存的に発現誘導されるチロシンフォスファターゼが重要な役割を担っていることが判明した(投稿準備中)。 2)初代培養肝細胞のHGFに対する応答性に影響を与える環境条件についてさらに検討した。その結果アミノ酸の1種であるプロリンが欠損すると細胞質のリン酸化シグナルは全く影響を受けないにもかかわらず一部の細胞周期開始因子の発現が抑制され、HGFに対する増殖開始応答が失われることが明かとなった。 3)培養ヒト株化肺癌細胞を用いてc-MetのHGFに対する応答性をON、またはOFFに制御する生化学反応について解析し、HGF受容体c-Met中の985番目のセリン残基がリン酸化されるとHGFによるc-Metの活性化が起こらないことが判明した。985番目のセリンに対するリン酸化酵素(キナーゼ)の解析を行ない、ProteinキナーゼC(PKC)ファミリーに属する特定の分子種を同定した。このPKC分子種は細胞が過酸化ストレスにさらされると活性化し、HGFの作用を抑制した。この現象は突然変異誘発性ストレス下でHGFによる発癌・癌悪性化の危険性を回避するための細胞内因性の制御機構であることが示唆される(投稿中)。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Bessho S.et al.: "Counteractive effects of HGF on PDGF-induced mesangial cell proliferation in a rat model of glomerulonephritis"Am.J.Physiol. 284. F1171-F1180 (2003)
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[Publications] Qian LW et al.: "Radiation stimulates HGF receptor/c-met expression that leads to amplifying cellular response to HGF stimulation via upregulated receptor tyrosine phosphorylation and map kinase activity in pancreatic cancer cells"Intern.J.Cancer. 104. 542-549 (2003)
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[Publications] Pai R.et al.: "Prostaglandins promote colon cancer cell invasion ; signaling by cross-talk between two distinct growth factor receptors"FASEB J.. 17. 1640-1647 (2003)
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[Publications] 橋ヶ迫 敦子 et al.: "HGFによる難治性肝疾患の再生治療"血液・免疫・腫瘍. 8(1). 44-51 (2003)
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[Publications] 町出 充, 中村 敏一: "増殖因子の臨床応用 -HGFによる再生医療の展開-"現代医療. 35(7). 140-148 (2003)
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[Publications] 町出 充, 中村 敏一: "HGFによる肝再生医療の展開"G.I.Research. 11(6). 69-76 (2003)