2004 Fiscal Year Annual Research Report
ジーンターゲティングによる新規癌抑制遺伝子の機能解析
Project/Area Number |
15590335
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
井上 寛一 滋賀医科大学, 医学部, 助教授 (30176440)
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Keywords | 癌抑制遺伝子 / Drs / アポトーシス / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
Drs遺伝子はSushiモチーフと呼ばれる構造と膜貫通ドメインを持つ新しいタイプの癌抑制遺伝子である。Drsは小胞体においてアポトーシス誘導蛋白ASYと結合し、種々のヒト癌細胞株にCaspase-12,-9,-3の活性化を介するアポトーシスを誘導する。我々はDrsの生理機能と癌発生における役割を明らかにするためにDrsノックアウト(KO)マウスを作製し個体および細胞レベルでの解析を行ない以下のことを明らかにした。 1.DrsKOマウス(46匹)は生後8-12ヶ月で、その約20%にリンパ腫、肺癌、肝癌、肉腫などの悪性腫瘍が発生した。一方、Wild-typeマウス(23匹)では12ヶ月までに腫瘍発生はみとめらなかった。 2.この肺癌から樹立した癌細胞株LC-T1にレトロウイルスベクターによってDrsを再導入すると、ヌードマウスでの造腫瘍能が顕著に抑制された。このときDrsを再導入した癌細胞による腫瘍ではアポトーシスが亢進していた。 3.DrsKOマウス由来胎児繊維芽細胞(MEF)はラパマイシンやデキサメタゾンなどの薬剤によるアポトーシスに耐性を示した。 4.DrsKO MEFではグルコース飢餓条件下でアポトーシスを起こすことを見出し、Drs誘導アポトーシスとmTORシグナル経路との関連を見出した。 これらの結果からDrsは個体レベルでも癌抑制遺伝子として機能していることが明らかになった。また、DrsKO細胞の実験から、実際に生理的条件下でもDrsが特定のアポトーシス誘導経路に関わっていることも分かってきた。今後、DrsKOマウスおよび細胞を用いて、Drsによる新規アポトーシス経路とmTOR経路とのクロストークの分子機構を明らかにし、これらの経路が発癌制御にどのように関わっているのかを解明してゆきたい。
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Research Products
(5 results)