2004 Fiscal Year Annual Research Report
敗血症時の自然免疫におけるシグナル伝達の分子機構の解明
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15590349
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
松川 昭博 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 助教授 (90264283)
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Keywords | 敗血症 / 自然免疫 / シグナル伝達因子 / サイトカイン / ケモカイン / 好中球 / マクロファージ |
Research Abstract |
IL-10は炎症性サイトカイン産生抑制を通して敗血症時の局所および全身性の炎症反応を抑制する。IL-10のシグナル伝達因子はStat3である。15年度は、IL-10の抗炎症作用が自然免疫の担当細胞であるマクロファージ・好中球(食細胞)によって行われているかどうかを知るべく、Stat3を食細胞特異的に欠失したStat3改変マウスに実験的に感染性腹膜炎を誘導し、その後の生体反応をコントロールマウスと比較検討した。その結果、マクロファージ・好中球特異的にStat3が欠失したマウスは、高サイトカイン血症による全身性炎症症候群により、敗血症に対して高感受性であることが明らかとなり、食細胞に発現するStat3が、敗血症時の全身性炎症の制御に中心的な役割を担うことを初めて示した。この結果をもとに,16年度は,食細胞による炎症制御機構の詳細を解析した。腹膜炎に関与する食細胞としては,腹腔常在マクロファージと末梢血から動員される浸潤好中球・マクロファージがある。先のStat3改変マウスの末梢血白血球を枯渇させた状態でも,同マウスは炎症局所で高サイトカインを示すことから,炎症制御に関わる細胞は腹腔常在マクロファージである可能性が示唆された。そこで,Stat3欠損常在マクロファージを野生型マウスの腹腔内に移入した状態での炎症反応を観察した。その結果,Stat3+/+腹腔常在マクロファージを移入されたマウスに比べ,Stat3欠損常在マクロファージを移入されたマウスでは,局所の炎症性サイトカインおよび炎症細胞浸潤は有意に増加した。この結果より,炎症反応は腹腔常在マクロファージに発現するStat3によって負に制御されることが初めて示された(投稿中)。一方,Stat3改変マウスにみるTh1サイトカイン産生過剰が,獲得免疫形成に及ぼす影響についても解析し,このマウスでは,Th1型,Th2型の獲得免疫反応はいずれも増幅されることを示した。このメカニズムとして,Stat3欠損マクロファージ/樹状細胞にみる抗原提示細胞の能力の亢進が考えられた(投稿準備中)。
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Research Products
(3 results)