2004 Fiscal Year Annual Research Report
Etsファミリー遺伝子Fli-1と乳癌および膵臓癌の悪性化に関する研究
Project/Area Number |
15590357
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Research Institution | Sasaki institute |
Principal Investigator |
及川 恒之 財団法人佐々木研究所, 細胞遺伝部, 部長 (80150241)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 拓也 財団法人佐々木研究所, 細胞遺伝部, 研究員 (20353477)
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Keywords | 乳癌 / 転写因子 / Ets / 悪性度 / アポトーシス / Fli-1 / bcl-2 / MMP |
Research Abstract |
昨年度、われわれはEts-1,Fli-1の発現が低く悪性度が低いヒト乳癌細胞株MCF-7にFli-1の発現ベクターを導入し、Fli-1導入細胞とコントロール細胞との間の生物学的特徴の変化を検索したところ、増殖能などには差が見られなかったが、Fli-1導入細胞では血清除去によるアポトーシスの誘導がFli-1導入細胞で有意に抑制されていることを見出した。そこで本年度は、このアポトーシス阻止の分子機構を検索した。その結果、コントロール細胞でも血清除去によりFli-1,bcl-2遺伝子の発現が誘導されることが明らかとなったが、それらの発現レベルはFli-1導入細胞でさらに高かいことが明らかとなった。この、Fli-1,bcl-2遺伝子の発現誘導はJNK(Jun N-terminal kiase)阻害剤で抑制されることから、これらの遺伝子の発現誘導にはJNKが関与していることが明らかとなった。同様にFli-1導入細胞ではUV照射により誘発されるアポトーシスも抑制されていた。bcl-2遺伝子プロモーターにはEts結合部位があることから、癌細胞で高い値を示すFli-1がbcl-2遺伝子の発現を亢進し、癌細胞のアポトーシス阻止に働いていることが考えられた。さらに本年度は、Fli-1以外にもヒト乳癌細胞株でしばしば発現の高いEts-1,Ets-2,ER81,E1AF遺伝子の癌細胞内での機能を調べるために、siRNAの系の検討を試みた。個々のEtsファミリー遺伝子に対するsiRNAを悪性度が高いヒト乳癌細胞MDA-MB-231に導入したところ、いずれのsiRNAも特異的に1つのEtsファミリーメンバーの発現だけを特異的に抑制した。そこで、これらの特異的siRNAを用い、MDA-MB-231細胞のEts-1の発現を下げるとMMP-1,MMP-3,MMP-9遺伝子の発現が低下し、チャンバーでの浸潤能が低下した。また、Ets-2の発現を下げるとMMP-1,MMP-3,MMP-7遺伝子の発現が低下し、チャンバーでの浸潤能も低下した。一方、ER81の発現を下げるとMMP遺伝子群の発現は変化せず、むしろアポトーシス関連bad磁遺伝子の発現が低下した。以上のことから、癌細胞ではいくつものEtsファミリー遺伝子が同時に発現しているが、アポトーシスに主に作用するもの、浸潤能に作用するものなど個別に機能が異なることが推測された。現在、論文を作成中である。
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Research Products
(2 results)