2004 Fiscal Year Annual Research Report
がん間質形成過程における、骨髄細胞由来筋線維芽細胞の関与についての検討
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15590359
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Research Institution | National Cancer Center Research Institute East |
Principal Investigator |
石井 源一郎 国立がんセンター(研究所), 臨床腫瘍病理部, 室長 (00270869)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
落合 淳志 国立がんセンター(研究所), 臨床腫瘍病理部, 部長 (60183034)
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Keywords | 筋線維芽細胞細胞 / がん細胞 / 骨髄細胞 / GFP / がん微小環境 / 間質反応 / モデルマウス / がん進展 |
Research Abstract |
ヒトがんの生物像は多彩であり、がん細胞のみならず、その周囲を様々な種類の間質細胞が充填している。がん間質内に出現する線維芽細胞は、非がん部の線維芽細胞とは生物学的に異なった形質を有しており、がん進展に何らかの影響を与えている可能性が報告されている。しかしながら、がん間質内の線維芽細胞は明らかに解剖学的、生物学的に不均一な細胞集団であり、この不均一性ががん間質研究の大きな妨げとなっているものと考えられている。我々は、GFPトランスジエニックマウスかつRAG-1欠損マウス骨髄細胞を免疫不全マウス(SCID)に骨髄移植した。そして、ヒト膵がん細胞株をこのマウスに移植し、以下の知見を得た。1)がん間質内の筋線維芽細胞は起源が不均一であり、1)骨髄由来、2)非骨髄由来(既存組織由来)の線維芽細胞が存在している。2)腫瘍形成早期(2週間)には、がん間質に動員される線維芽細胞の大半はがん胞巣周囲の間質組織由来線維芽細胞であるのに対し、腫瘍形成後期(4週間)では、多くの骨髄由来の線維芽細胞が末梢血を介してがん間質の形成に参画していた。 さらに、10種類のヒトがん細胞株をこれら骨髄移植マウス皮下に移植し、生着した腫瘍組織における腫瘍の大きさ、間質量、微小血管密度、骨髄由来線維芽細胞数、骨髄由来血管内皮細胞数を解析した。その結果、腫瘍間質において間質反応を伴うがん組織では、その間質量と相関して、骨髄由来の線維芽細胞、血管内皮細胞が動員されることを証明した。さらに、膵がん細胞株Capan-1を、皮下、腹膜、脾、肝、肺に移植した結果、腫瘍間質量は、生着臓器により異なっていた(皮下、腹膜>>脾、肝、肺)。また、間質反応を伴うがん組織(皮下、腹膜)では、骨髄由来の線維芽細胞が高頻度に動員されていたが、間質反応の乏しい組織(脾、肝、肺)では、ほとんど動員されていなかった。この事実は、がん間質形成における、骨髄由来線維芽細胞の機能の重要性を意味しているものと考えられる。さらに、骨髄からの線維芽細胞の動員機構には、腫瘍細胞の生物学的性格のみならず、腫瘍生着臓器の微小環境が重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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Research Products
(17 results)