2004 Fiscal Year Annual Research Report
筋肉細胞を変異させる旋毛虫由来物質の分子生物学的解析と宿主細胞への作用機序の解明
Project/Area Number |
15590366
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
長野 功 岐阜大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (40283296)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 優三 岐阜大学, 医学部, 教授 (80094580)
呉 志良 岐阜大学, 大学院・医学研究科, 助手 (90313874)
|
Keywords | 旋毛虫 / 遺伝子発現 / シスト形成 / 分泌・排出蛋白 / エノラーゼ / RCD-1 / マイクロアレイ / アポトーシス |
Research Abstract |
旋毛虫(Trichinella)は多くの生理活性物質を食道腺より分泌し、シスト形成(nurse cell形成)並びにその維持を行っている。今年度は新たに2種類の生理活性物質(エノラーゼ、RCD-1)を旋毛虫のcDNAからクローニングした。エノラーゼは解糖系酵素の一種であり、さまざまな生物に存在する。近年エノラーゼば様々な機能を有することが見出され、特に寄生虫では、宿主細胞侵入時におけるプラスミン様の蛋白溶解作用が注目されている。旋毛虫のエノラーゼはすべての発育ステージで発現しているが、融合蛋白の分泌シグナルシークエンスを除去しないと、機能が発現しないことなどより、分泌蛋白である可能性が示唆された。一方、RCD-1は近年酵母より初めてクローニングされた転写因子活性を有する蛋白である。旋毛虫のRCD-1は主に筋肉幼虫の分泌蛋白中に存在し、感染宿主細胞の変異に何らかの役割を担っていることが示唆された。 T.pseudospiralisはT.spiralisと異なり、典型的なシスト形成を行わない。旋毛虫感染筋肉細胞の組織学的な検討では、T.pseudospiralisはT.spiralisより感染筋肉の細胞死は遅れ、myopathyが維持される。ミトコンドリアのアポトーシス関連遺伝子の発現について検討した結果、感染筋肉細胞においてT.pseudospiralisではT.spiralisより長期に渡り、アポトーシス関連遺伝子の発現が高値を示し、T.pseudospiralis感染細胞のmyopathyを維持する要因になっていることが示唆された。 旋毛虫による筋肉細胞変異に関与する宿主遺伝子について、マイクロアレイによって検討した結果、細胞分化成長関連遺伝子、ガン遺伝子、アポトーシス関連遺伝子の発現が感染により高値を示した。その中で、アポトーシス関連遺伝子であるTNF-α、TNFR-1、TRADD、caspase3、caspase8、TRAF2およびRIPの発現について詳細に検討した。これら遺伝子はナース細胞に限局して発現が認められ、シスト形成と密接に関連していることが示唆された。
|
Research Products
(2 results)