2005 Fiscal Year Annual Research Report
感染リーシュマニア原虫種の判別法の確立とパキスタン共和国における応用
Project/Area Number |
15590371
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
上里 博 琉球大学, 医学部, 助教授 (60160157)
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Keywords | パキスタンイスラム共和国 / リーシュマニア症 / cytochrome b遺伝子 / 臨床症状 / Leishmania Leishmania major / Leishmania Leishmania tropica |
Research Abstract |
目的 平成15〜16年度にかけて、リーシュマニア原虫の全cytochrome b(cyt b)遺伝子の塩基配列を決定し、同遺伝子の系統樹からリーシュマニア原虫種の同定、分類が可能であることを報告した。平成17年度はパキスタン共和国在住のリーシュマニア症患者皮膚病変組織検体内に感染したリーシュマニア原虫cyt b遺伝子を解析し、パキスタン共和国における原虫の種類とその頻度や地理的分布、臨床症状との相関について検索することを目的とした。 方法 1)パキスタンイスラム共和国において、2003年1月から2004年12月までの約3年間、バロチスタン州のクエッタ(標高1700-1800m)周辺の部落とシンド州のラルカナおよびサカッル(標高100m)周辺に在住し、皮膚病変を有する皮膚リーシュマニア症を診察した。診察した患者総数は214例(男性:119例、女性:95例)であった。その214例のうち皮膚リーシュマニア症と確定診断した60例についての皮膚症状(dry type, wet type, dry and wet type)と原因原虫および患者の分布を解析した。その60例の内訳は、年齢が10ヶ月〜50才(平均年齢20.7才)、性別は男40例、女20例であった。さらに従来の教科書の記載に従い、臨床症状をdry typeとwet type、そして両者が混在する症例をdry and wet typeと区別した。 2)リーシュマニア原虫種の同定方法は、皮膚生検組織および分離培養原虫株からgenomic DNAを抽出し、cytochrome b遺伝子のconsensus primerでPCRを行い、そのPCR産物を精製した。その後にdirect sequencingを行い、その塩基配列を決定し、NCBI/BLAST解析を行って原虫種を同定した。 結果と結論 2003年1月〜2004年12月(約3年間)までに60例のCL患者のリーシュマニア原虫のcytochrome b遺伝子を調べた結果では、dry type 16例中6例(37.5%)がL.(L.)tropicaによる原因原虫であり、残り10例(62.5%)は教科書の記載とは異なりL.(L.)majorであった。さらに、wet typeと診断された34例中27例(79.4%)の原因原虫はL.(L.)majorであったが、6例(17.6%)はL.(L.)tropicaであった。なおDry typeとwet typeが混在する症例もあり、dry and wet typeと診断された10例中1例(10%)はL.(L.)tropica、9例(90%)がL.(L.)majorによる原因原虫であった。一方、原因原虫と患者在住地の地理的関係をみると、標高1,700mのクエッタ周辺の山岳地帯に在住する患者は13例中12例(92%)がL.(L.)tropicaによるものでありL.(L.)majorが検出された1例は平地のシビで罹患した患者であった)、インダス川流域のラルカナやサッカル周辺の標高100mの砂漠地帯では47例中45例(96%)がL.(L.)majorによる感染例であった。つまり教科書的な臨床所見(dry or wet type)から原因原虫を推定するのは不正確と考えられ、地理的な相違による因子が大きいのではないかと考えている。
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Research Products
(4 results)