2004 Fiscal Year Annual Research Report
薬剤圧変遷に伴うクロロキン耐性熱帯熱マラリア原虫選択淘汰の集団遺伝学的検討
Project/Area Number |
15590375
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
美田 敏宏 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (80318013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚原 高広 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (90328378)
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Keywords | 熱帯熱マラリア / クロロキン / 薬剤耐性 / pfcrt / pfmdr1 / back mutation |
Research Abstract |
マラウイではクロロキン耐性熱帯熱マラリア原虫の著増により1993年クロロキンの投与が全面的に中止された.その後本研究者らが行った追跡調査により、クロロキン感受性の回復、および耐性原虫の著減と周辺諸国に比して有意に低いpfcrt K76T変異率が明らかになった.本研究では事象:「選択因子のない環境下における変異原虫の淘汰」につき、分子生物学的および集団遺伝学的手法を用いて検証した. パプアニューギニアの患者から得られたサンプルを用いて、以前よりクロロキン耐性との関連が示唆されているpfmdr1遺伝子変異の役割について探索を行った.結果、pfmdr1のN86Y、F184Yいずれの変異もクロロキン耐性能獲得と関連していなかった.また、これらの変異はpfcrtK76T変異原虫におけるクロロキン耐性レベル増強効果も起こさなかった.以上よりこれらの変異がクロロキン耐性メカニズムに直接関与している可能性は否定された.しかし、pfcrtK76Tとpfmdr1N86Yの間に強い連鎖不平衡が見られ、pfmdr1N86Yは、K76T変異原虫の生存にとって不都合なcostを代償するような働きをしていることが推察された. クロロキン圧消失後におけるK76T変異率の減少のメカニズムとして、 仮説1:「K76T変異原虫の相対適応度が野生型に比して低下している」 仮説2:「耐性原虫の76位にback mutationが起こった」 を立て、その検証を行った.結果、マラウイにおいてはback mutationを起こした原虫は見られず、K76T変異原虫は野生型原虫に比べ、0.76と著明に低いrelative fitnessを示していた.強力なクロロキン圧により選択されたK76T変異原虫は、クロロキン中止により淘汰されていったと推察された.選択と淘汰は集団遺伝学の基本原則である.本研究では、流行地域におけるクロロキン投与中止によるその感受性の回復という公衆衛生学上重要な事象に対し、基礎的研究により解明を試みた.この知見が流行地における抗マラリア薬休薬を応用した治療戦略構築に応用されることが期待される.
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Research Products
(1 results)