2004 Fiscal Year Annual Research Report
有機溶剤曝露が幼若動物の脳内GABA神経系の発達に及ぼす影響についての実験的研究
Project/Area Number |
15590512
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Research Institution | OKAYAMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
伊藤 武彦 岡山大学, 教育学部, 助教授 (10291973)
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Keywords | 有機溶剤中毒 / m-キシレン / GABA神経系 / 免疫染色法 / 曝露実験装置 / 幼若動物 |
Research Abstract |
1.幼若動物用の曝露実験装置の改良 幼若な動物に連続してm-キシレンを曝露するため、昨年度の研究では、曝露実験装置(実験系)を試作した。すなわち、チャンバー内を動物の発育に応じた環境に保つために、低温恒温装置(恒温域が広いもの)内に曝露チャンバーを数個格納出来るように設計した。この装置を運用してみた結果、動物の生活環境をなるべく保存した状態で曝露実験を行うことが適当と考えられた。そこで、チャンバー内に動物を入れるのではなく、ケージごと特殊な素材(ガス透過性が極めて小さいもの)で包み、動物の飼育環境を損なわずに比較的長期間小規模の曝露実験が可能となる装置を開発した。本件は、第78回日本産業衛生学会で発表予定である。 2.形態学的変化の観察 曝露による神経系の変化の観察は、マイクロスライサーを用いた脳組織の切片を作成し、これを主に免疫組織学的方法で観察した。免疫組織学的観察にあたっては、従来汎用されているDAB試薬の毒性(変異原性ないし発がん性)を考慮し、取り扱いや廃液処理の点で、より安全と考えられるtrimethylbenzidineを用いたプロトコルを検討した。m-キシレンが幼若動物の脳内GABA受容体に及ぼす影響について一定の所見が得られた。 3.行動科学的観察 ロータロッド装置によって、神経系の発達程度を行動科学的に観察した。さらに、動物の自発運動量を測定すべきであると考える所見を観察したが、ビデオ観察ではデータ処理に時間がかかるため、市販の自発運動量センサに工業用汎用計数装置を組み合わせた系を試作した。 以上、幼若動物用の曝露実験装置を開発するとともに、それを用いて、m-キシレンが幼若動物の脳に与える影響について一定の知見が得られた。なお、今後は、GABA神経系についての検討を進めていくべきであるほか、とりわけセロトニン神経系の関与を検討する必要性が示唆された。
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