2005 Fiscal Year Annual Research Report
生体影響(肺病変)予測指標としての吸入性粒子の物理化学的因子の検討
Project/Area Number |
15590528
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health |
Principal Investigator |
大藪 貴子 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助手 (20320369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 勇武 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (00038035)
森本 泰夫 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (30258628)
大和 浩 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助教授 (90248592)
大神 明 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助教授 (40301692)
黒田 香織 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教務職員 (40389474)
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Keywords | 吸入性粒子 / 肺内滞留性 / 溶解性 / 幾何形状 / 気管内注入法 / 線維化 |
Research Abstract |
環境中の吸入性粒子による線維化やがん化などの肺病変は、吸入された粒子の肺内滞留性に依存することが知られている。本実験では、その肺内滞留性に影響を及ぼすと考えられる肺内粒子の物理化学的特性である"溶解牲"と"粒子形状"に焦点をあて、これらの因子と粒子の肺内滞留性、肺病変との関係を明らかにすることを目的とした。 試料は、溶解性の影響を検討するために、粒子形状が等しく溶解性が異なる2種類の吸入性の繊維状物質(硫酸マグネシウムウィスカ(易溶)、チタン酸カリウムウィスカ(難溶))を用いた。さらに粒子形状の影響を検討するために、チタン酸カリウムウィスカと同じ組成(溶解性)の粒子状チタン酸カリウムを用いた。 まず、幾何形状、溶解性を明らかにした。溶解性測定装置については、粉じん周囲の溶液が連続的に変わり、対象物の溶解性にあわせて流量、試料量等の条件を変えることが出来る我々独自に開発したフローシステムを構築し測定を行った。幾何形状、溶解性測定の結果、2種類の繊維状物質はほぼ同じ形状であるが、溶解性は硫酸マグネシウムウィスカの方が非常に高く、また同じ化学組成のチタン酸カリウムは、繊維状、粒子状ともに非常に難溶性であった。 これら2つの物理化学的特性と肺内滞留性を比較した結果、同じ幾何形状であっても溶解性の高い硫酸マグネシウムウィスカはチタン酸カリウムウィスカに比較して排泄が非常に速く、また、同じ化学組成のチタン酸カリウムにおいても、粒子形状の試料の方が繊維形状の試料より排泄が速く生体影響が少ないことが明かとなった。 これらのことから、同じ化学組成では幾何形状が繊維状の方が粒子状に比較して肺内滞留性が高いが、繊維状であっても溶解性が高ければ生体影響は小さいことが予測される。粉じんのこれらの物理化学的因子を明らかにすることにより、今後生体影響を予測できる可能性があると考えられた。
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